小児科医に聞く 赤ちゃんのお肌Q&A
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第4回「アトピー性皮膚炎」その1 赤ちゃんのアトピー
赤ちゃんの「アトピー」と正しく向き合うために、まずは知っておきたい基礎知識から。
「アトピー」ってなんだろう
「アトピー」の症状が現れるのは、ほとんどの場合、生後4カ月以降です。耳の裏側や耳たぶ、ひじ、ひざなどの関節部分の皮膚が切れて、ジュクジュクになるのが特徴です。また、体に円形の「貨幣状湿疹」が見られるのも赤ちゃんに多い症状です。「アトピー」という言葉がメジャーになり過ぎたため、湿疹ができると「アトピー」だと心配するママが多いですが、「乳児湿疹」はほぼ全ての赤ちゃんに現れるのでぜひ覚えておいてください。
どうして「アトピー」になるのでしょう
「アトピー」は「体質」ですから、何らかのアレルギーが関係していると考えられています。しかし、残念ながら、原因はまだはっきりとわかっていません。ダニが原因などとよくいわれていますが、それだけではないでしょうし、食べ物や水、空気、化学物質など、私たちを取りまく環境が多少とも影響している可能性はあります。
「アトピー」と「乳児湿疹」の違い
赤ちゃんは、生後1カ月から1カ月半頃に、ほほやおでこの部分を中心に湿疹が現れます。医師によっては、この状態を即「アトピー」と診断し、治療を開始することがあります。しかし、これはほぼ全ての赤ちゃんが一時経過する「乳児湿疹」というもので、「アトピー」とは違います。「乳児湿疹」は、皮脂の分泌が活発になったことで起こるものなので、特別な治療は必要ありません。皮脂が目立ってきたときに、石けんなどで洗うなどのスキンケアをしてあげるといいでしょう。ただし、脂分を落とし過ぎて、乾燥させてしまってはいけないので、肌の状態をよく見ながら、適切なケアを心がけましょう。なお、「乳児湿疹」の症状がひどくなって、赤みをおびたり、ジュクジュクになったりしてきたら、炎症を起こしていることも考えられるので、スキンケアだけでは治りません。そのときは、医師に相談してくださいね。
「アトピー」の症状
アトピーは病気の一種。「アトピー性疾患」や「アトピー性素因」といわれ、アレルギーが原因で出る症状の総称です。「アトピー性皮膚炎」はそのひとつの症状にすぎません。食事からくる腸のアトピーもあります。原則としては、「アトピー」はひどくなったり良くなったりと症状を繰り返します。「アトピー性皮膚炎」の原因は不明ですが、アレルギーは原因の引き金にすぎません。「アトピー」は顔や首、胸、ひじやひざなどに多く見られます。汗をかきやすく、皮膚のバリアが弱いのに肌と肌がこすれて、刺激をうけて湿疹が出ます。
赤ちゃんに「アトピー」の症状が現れるのは早くて生後4カ月頃
「アトピー」とは、体質に対してつけられた名前です。最近は、ちょっとした湿疹でも「アトピー性皮膚炎」と診断されることが多いようです。学問的に定義された「アトピー性皮膚炎」以外の状態にも、安易にこの病名が使われているようですね。赤ちゃんに「アトピー」症状が現れるのは、早くて生後4カ月頃です。乳児期は、皮膚の表層が薄いため、幼児期から大人にかけての「アトピー性皮膚炎」のような、皮膚の表層が乾燥してはげてくるといった症状が現れることは少ないです。耳のうしろやひじ、ひざの裏側など、関節部分の皮膚が切れたりする典型的症状をはじめ、貨幣状などさまざまな形の湿疹が現れたりもします。また、かなりかゆみをともなうために、かいてますますジュクジュクしたり、ばい菌が入って「とびひ」になってしまったりする心配があります。
赤ちゃんに「アトピー」の症状が現れるのは早くて生後4カ月頃
「アトピー」の原因が解明されていない現在の医学では、その答えはありません。「アトピー」を発症する子は、どんな努力をしてもなるときはなるのです。ですから、「ならないように」と考えるよりは、むしろ「なった時にどうするか」を考えるべきでしょう。
監修の先生のプロフィール
加部一彦(かべかずひこ)
- 埼玉医大総合医療センター新生児科教授、小児科医。
- 新生児集中治療室(NICU)で、主に早産のために小さく生まれたり、生まれてすぐに何らかの病気をかかえ、入院となった赤ちゃんのお世話を生業としている他、医療安全や病院建築など幅広い領域に関心を持って活動中。すでに社会人となった3人の息子達とはSNSで情報交換したり、時には飲みに行ったりと、「オトナの付き合い」ができる様になった事を喜んでいる。著書に『新生児医療は、いま』(岩波書店)、『障害を持つ子を産むということ』(中央法規出版)など。
石井のぞみ(いしいのぞみ)
- 東京女子医科大学医学部卒業。現在、愛育病院小児科勤務。01年12月に女児を出産、02年4月より職場復帰。自分が子どもを持ったことで、よりママ・パパの気持ちがわかるようになり、具体的なアドバイスができるようになったと話す。近年の小児科は、心の問題の比重が大きくなってきている。精神的な面から体の不調を訴える子どもたちとママ・パパの力になっていければと考えている。