小児科医に聞く 赤ちゃんのお肌Q&A
小児科医に聞く 赤ちゃんのお肌Q&A
第1回「あせも、おむつかぶれ」
あせも、おむつかぶれは、赤ちゃんのお肌の2大トラブル。「乳児湿疹」「アトピー」なども含め、症状が似ていることもあり、対応に迷うママも多いようです。
「あせも」は首のうしろやおっぱいの上の部分に多い
「あせも」は、汗をかく所にできやすいものです。赤ちゃんは汗っかきですが、汗が出る腺がとても少なく、まだ十分に開かない汗の腺にまで汗が出ようとした結果、その中にたまっている水がやぶれ出て、肌にこすれるて「あせも」になります。お肉のひだとひだの間でジトーっと湿った部分のふやけやすい角質が、こすれやすく「あせも」になりやすいようです。月齢3カ月頃までは、首のうしろや、前胸部といっておっぱいの上の部分が湿りやすいですね。赤ちゃんの湿疹はみな同じような症状に見えますが、体のどんな所に、どんな症状になりやすいかを知っておくと、「あせも」や「湿疹」など、症状を見分ける時に役立ちます。
「おむつかぶれ」は「湿疹」ではない
「おむつかぶれ」は「湿疹」ではなく、肌と肌がこすれあい、ただれてしまう症状です。そのため、左右対称にできる場合が多いですね。症状のごく初期に赤ちゃんの股のひだをあけてみると、こすれている所が赤く、こすれていない所は健康な肌が見られるケースが多いです。「おむつかぶれ」を防ぐポイントは、よく乾かすこと。おむつのなかはとても蒸れます。おしりをきれいに洗い、おむつのなかを乾かす工夫を心がけましょう。
おむつの中にカビ?!おむつかぶれに似た病気「カンジダ」
頻度はそう高くありませんが、おむつのなかに「カンジダ」というカビが発生することがあります。蒸れて湿気が多いおむつのなかは、カビが生育しやすい環境です。特に月齢の小さいうちは、皮膚の抵抗が弱く、排泄回数も多いので、「カンジダ」にかかる確率が高いようです。
「カンジダ」は、「おむつかぶれ」に似ていますが、見分けは簡単です。「おむつかぶれ」は、何か(たとえば、皮膚やおむつ)とこすれる部分が赤くただれますが、「カンジダ」は、こすれない部分、たとえば股のヒダ状の中の部分が真っ赤になったり、汚らしくヌルヌルしたりします。
一方、おむつの型に全体的にベターっと赤くただれて健常な皮膚が残らないのが「カンジダ皮膚炎」です。湿ったところに生える真菌(カビの一種)が原因で、感染症の一種で、これは乾かしただけでは治りません。抗真菌剤を塗らないと治らないので、早めに病院へ行き、抗カビ剤の薬を処方してもらいましょう。
赤ちゃんの肌を清潔に保つには
清潔にすることと、保湿が大切です。皮膚には、外からのばい菌を防ぐ役割と、内側にある水分を保つ役割があります。赤ちゃんの皮膚は薄く、水分が外に逃げやすく、石けんでごしごし洗いすぎると皮膚の脂分が落ちてバリア機能を弱めてしまいがち。逆に洗わないと脂分が多くなり、「脂漏性湿疹」になる可能性も高くなってきます。脂が多いといわれている眉毛やおでこの部分をしっかり洗ってあげてください。ただし、保湿しないと今度は乾燥してしまいます。清潔にしつつ保湿をしてあげるスキンケア方法をおすすめしています。
丈夫な肌に育てよう
新生児の頃の赤ちゃんの肌はとても弱いもの。特に生まれたての赤ちゃんは体の中の水分を保てません。例えば、未熟児の場合、生まれたときは肌がゼラチンのような状態です。保育器の中に入れ、湿度を100%くらいに保ち、だんだん湿度を下げて50%くらいに戻していくと、その周りの刺激に抵抗するようにゼラチン肌がどんどん丈夫になっていきます。周りの様々な刺激に慣れ、丈夫な肌に育てていくことも必要です。
監修の先生のプロフィール
加部一彦(かべかずひこ)
- 埼玉医大総合医療センター新生児科教授、小児科医。
- 新生児集中治療室(NICU)で、主に早産のために小さく生まれたり、生まれてすぐに何らかの病気をかかえ、入院となった赤ちゃんのお世話を生業としている他、医療安全や病院建築など幅広い領域に関心を持って活動中。すでに社会人となった3人の息子達とはSNSで情報交換したり、時には飲みに行ったりと、「オトナの付き合い」ができる様になった事を喜んでいる。著書に『新生児医療は、いま』(岩波書店)、『障害を持つ子を産むということ』(中央法規出版)など。
石井のぞみ(いしいのぞみ)
- 東京女子医科大学医学部卒業。現在、愛育病院小児科勤務。01年12月に女児を出産、02年4月より職場復帰。自分が子どもを持ったことで、よりママ・パパの気持ちがわかるようになり、具体的なアドバイスができるようになったと話す。近年の小児科は、心の問題の比重が大きくなってきている。精神的な面から体の不調を訴える子どもたちとママ・パパの力になっていければと考えている。