小児科医に聞く 赤ちゃんのお肌Q&A
小児科医に聞く 赤ちゃんのお肌Q&A
第3回「乳児湿疹、乳児脂漏性湿疹」
乳児湿疹は新生児の頃から起こる赤ちゃんのお肌トラブル。新生児ニキビや脂漏性湿疹など、さまざまな種類や原因があり、見分けがつきにくいこともあります。具体的な症状やそれぞれのケアの方法は?
「乳児湿疹」とは?
「乳児湿疹」とは、生後2〜3週間から2ヶ月頃の赤ちゃんの顔やからだの一部に見られる湿疹の総称です。「乳児脂漏性湿疹(にゅうじしろうせいしっしん)」「新生児ニキビ」「あせも」なども「乳児湿疹」の一種です。症状もさまざまなので、区別がしにくいこともあります。お子さんによっては、症状がいくつも混在している場合もあるので、同じ日に違う病院に行って、一方では「乳児湿疹」、もう一方では「脂漏性湿疹」もしくは「アトピー」などといわれる場合もあります。典型的な「乳児脂漏性湿疹」は、頭やおでこを中心にかさぶたのようなものができたり、ほほが赤くなるなどの症状があります。
「新生児ニキビ」「乳児脂漏性湿疹」とは
どちらも過剰な皮脂分泌によって起こる「乳児湿疹」の代表的な皮膚トラブルです。赤ちゃんは、ママのおなかの中にいたときにホルモンの影響を受けています。そのため新生児期から3ヶ月くらいまでは皮脂の分泌が非常に活発で、皮脂の“脂が漏れて”湿疹になってしまうのです。どの赤ちゃんにもできる可能性があるといわれていますが、大人でもニキビができやすい人とそうでない人がいるように、「乳児湿疹」も症状が出やすい子とそうでない子がいます。体質や皮膚の丈夫さが関係しているようです。新生児ニキビ」は、生後1週間から3ヶ月頃の赤ちゃんにできるニキビのこと。思春期のニキビと同じように、ほほやおでこにブツブツができます。赤く腫れたりしていなければ、特に治療は必要なく、ほとんどの場合は自然に消えていきます。「乳児脂漏性湿疹」は体にはできず、首から上の頭、ほほやおでこにできます。頭に丸いうろこのようなものができる赤ちゃんもいますし、頭やおでこのあたりにフケのようなカサカサしたものができる赤ちゃんもいます。かゆみはなく、1歳ぐらいまでに自然に治る場合がほとんどですが、入浴の際にしっかりと皮脂を洗い流してあげることが大切です。
「乳児脂漏性湿疹」のケア
軽い症状なら、石けんでよく汚れを落として皮膚を清潔にしてあげれば、良くなってしまう場合もあります。「乳児脂漏性湿疹」の場合、逆にかさぶたが取れて黄色くジュクジュクすると、そこからばい菌が入ってしまう可能性もあるので、そのときは抗生物質入りの軟膏を塗ってあげたり、皮膚を保湿するような薬を使ったりします。どんなに手をキレイに洗っても、湿疹にさわる頻度が多くなると雑菌がつく可能性も高くなるので、できればさわらずに乾かしてください。ママは赤ちゃんがいる部屋の温度を下げすぎないようにと気を配るものですが、暖かくしすぎると逆に体温が上がり、皮膚血管が拡張してかゆみが強くなりがちです。日本の夏は湿度が高く蒸し暑いので、クーラーや除湿機などをうまく使って、こまめに除湿をしましょう。「今日は暑くて過ごしにくいな」と感じたら、クーラーの効いた涼しい部屋に赤ちゃんを連れて行ってあげてください。皮膚が乾燥するような状態にしてあげるくらいのほうが、「乳児脂漏性湿疹」には良いのです。
「乳児湿疹」は、治るものなのでご安心を
「乳児湿疹」は、きちんと肌を清潔に保っていれば、どんなに長くかかっても1年くらいで治ってしまいます。本人の皮膚のバリア、つまり抵抗力がしっかりできてくると症状が良くなってくるのです。だから、それまではばい菌が侵入するのを防ぐため、お風呂に入れて肌を清潔に保ってあげましょう。症状がひどい場合は、赤ちゃんの頭や顔を洗ってあげる回数を増やすのも良いですよ。
こんな場合は病院へ
湿疹がジュクジュクして膿んでくると、二次感染でほかの部分にうつることもありますから、そのときは受診したほうが良いでしょう。その場合は、抗生物質入りの軟膏を塗ったり、症状がひどければ、内服の抗生物質などを飲ませたりすることがあります。また、肌が乾燥していると赤ちゃんがひっかいてしまい、その傷が「とびひ」になる可能性もあるので、その場合も受診したほうが良いでしょう。とはいえ、乾燥だけかなと思うときは、市販の保湿剤を塗ってあげて、病院へ行く前に様子を見るのもひとつの手だと思います。また、「アトピー」や「アレルギー」を疑うような場合には、症状や経過を根気よく見守り、なるべく症状を悪化させないよう、刺激を少なく保つ工夫をしましょう。
監修の先生のプロフィール
加部一彦(かべかずひこ)
- 埼玉医大総合医療センター新生児科教授、小児科医。
- 新生児集中治療室(NICU)で、主に早産のために小さく生まれたり、生まれてすぐに何らかの病気をかかえ、入院となった赤ちゃんのお世話を生業としている他、医療安全や病院建築など幅広い領域に関心を持って活動中。すでに社会人となった3人の息子達とはSNSで情報交換したり、時には飲みに行ったりと、「オトナの付き合い」ができる様になった事を喜んでいる。著書に『新生児医療は、いま』(岩波書店)、『障害を持つ子を産むということ』(中央法規出版)など。
石井のぞみ(いしいのぞみ)
- 東京女子医科大学医学部卒業。現在、愛育病院小児科勤務。01年12月に女児を出産、02年4月より職場復帰。自分が子どもを持ったことで、よりママ・パパの気持ちがわかるようになり、具体的なアドバイスができるようになったと話す。近年の小児科は、心の問題の比重が大きくなってきている。精神的な面から体の不調を訴える子どもたちとママ・パパの力になっていければと考えている。