持田ヘルスケア株式会社

助産師に聞く 妊娠初期Q&A

助産師に聞く 妊娠初期Q&A

妊娠初期の悩み・不安

妊娠が判明してから安定期に入るまでは、からだも心も不安定になってしまうもの。
急激な自分のからだの変化に驚いたり、「おなかの赤ちゃんは大丈夫?」と心配になってしまったり。
助産師さんのアドバイスを参考に、リラックスしながらこの時期を乗り切りましょう。

Q.

妊娠初期でも、旅行へ行っていいでしょうか?

A.

妊娠する前からお友達と予定していた旅行や家族旅行、また、実家に一時帰省したいなど妊婦さんも遠出をする機会はたくさんあります。妊娠初期に関わらず、妊娠中の旅行に関しては「行くか、行かないか?」「何泊何日が最適か?」「どんな場所がいいか?」など、迷うことがたくさんあります。かかりつけの病院の医師や助産師から、アドバイスを受けることはできますが、最終的にはご自分で判断し、自己責任の下で決定しなければなりません。
ですから、今回は、旅行を計画する時点での心構えをお話ししましょう。

妊娠初期とは妊娠1週から妊娠15週6日までの期間をいいます。この時期は、流産の心配やつわりのほか、下腹部の違和感・腹痛、出血などといったさまざまなリスクが高くなる時期です。また、妊娠初期のうち妊娠7週から妊娠11週までは胎児器官形成期といって、赤ちゃんの身体の重要な臓器が作られる時期です。この時期は感染症にかかったり、体調不良による薬の使用が赤ちゃんへ悪影響を及ぼす可能性の高い時期です。ですから、外出することによって体調のトラブルを招く可能性を避けるためにも、妊娠初期の旅行は極力控えた方がいいでしょう。
妊娠12週頃になるとつわりも落ち着き、一般的には体調が安定してきますが、個人差があります。流産の心配を考えると妊娠16週から妊娠27週までの間は旅行に行くリスクは低いのかもしれませんが、“旅行に行けるかどうか?”“旅行を日程通り続けられるかどうか?”というのは、妊娠時期に関わらず、妊婦さんのその時々の体調次第です。

○旅行前に体調の確認を
旅行の前1週間以内に健診を受け、体調を確認しておきましょう。
この時期の妊婦健診は4週間に1回のペースで受けることになります。ですから、最後の妊婦健診の日にちと旅行の時期が離れている場合は、旅行の前に一度、かかりつけの産婦人科を受診し、主治医に旅行に行く旨を相談しておくことをお勧めします。ただ、この受診で医師に「順調です。」と診断されても、「旅行に行っても大丈夫です。」という保証にはなりません。“昨日は何ともなかったからといって、今日もそうとは限らない”ということです。

○旅行への持ち物や服装
◇母子健康手帳、妊娠中の検査結果のコピー、保険証は必ず!!
医療機関への受診が必要になった場合に“保険証”は必須です。旅行中には“保険証”と、これまでの妊娠経過がわかるように“母子健康手帳と妊娠中に行った検査結果のコピー”この3点セットは必ず持ち歩きましょう。

◇冷え対策を忘れずに!!
暖かい場所への旅行、暑い季節の旅行だから冷えなんて関係ない!!と油断してはいけません。冷房による冷えや、その日の天気や昼夜の寒暖差など不意に体が冷えてしまうことは、季節を問いません。冷えを防ぐためにも靴下やブランケット、上着などの寒さ対策もしておきましょう。

◇疲れない服装でお出かけしましょう。
妊娠初期は、まだ、おなかが大きくないので、今までどおりおしゃれをしてお出かけしたいものです。しかし、おなかが目立たないとはいえ、ママのおなかには大切な赤ちゃんがいることを忘れないでください。特に旅行中は、長時間の移動などを考慮して、窮屈さを感じるような下着や衣服はおススメしません。楽に過ごすことのできる、ゆったりとした服装をおススメします。また靴はヒールの低い履きなれた靴を履いていくようにしましょう。

○旅行中の移動
妊娠初期は、つわり症状があるため乗り物酔いになりやすい状態になっています。ですから、長時間(6時間以上)の車移動や、船による移動は避けた方がよいと思います。車の運転を妊婦さんご自身がする場合、妊娠初期は急激に眠気に襲われたり、疲労感が出てきたりするので、そういった時は無理をせずに休憩を取りましょう。また、長い時間同じ姿勢で過ごすことがないように2時間に一度は車を降りて休憩をしたり、長時間の飛行機での移動では血栓予防のためにも足の体操をしたり、安全なタイミングで立ち上がって動くようにするとよいでしょう。

○旅行中の過ごし方
海外旅行でも国内旅行でも、いろいろな所を巡るよりも、一か所にのんびり滞在するような旅行がよいでしょう。
妊娠初期は、まだ、おなかが大きくないので、なかなか妊婦であるという自覚が持てない妊婦さんも多く、自分でも気がつかないうちに体に負担をかけてしまっていることも多いのです。ですから旅行中は、少しでも疲れたと思ったら、座って少しお休みを取るようにしましょう。スケジュールは時間の余裕を持って、予定を詰め込み過ぎないようにしてください。
集団行動のツアーなどは避け、フリープランの個人旅行にした方が、無理なく体調に合わせた行動ができます。
食べ物に関しては、国内旅行ではそんなに心配はありませんが、衛生状態と生ものには注意しましょう。海外旅行の場合は、現地の生水や果物、生ものといった食べ物には細心の注意を払い、食べたことがないものは食べない方が無難です。お母さんが食べたものは赤ちゃんのからだの中にも入っているということを忘れていけません。

○里帰り中の落とし穴
妊娠中の里帰りというと、一見、旅行とは違うような印象を受けますが、里帰りも旅行の一つと考えましょう。「実家でゆっくりしていたのに…出血をしてしまった。おなかが痛い。」などといった場合でも、一度も受診をしたことのない病院では受け入れてくれない場合が多いのが現状です。ですから、ご出産までの間に何度か里帰りを予定されていたり、しばらくの間里帰り先で過ごされる場合は、妊婦健診時にかかりつけの病院で紹介状を書いてもらい、一度、日中に里帰り先にある夜間・休日でも受け入れてくれる産婦人科を受診しておくとよいでしょう。

妊娠経過が順調だと、「自分に限っては…」と思いがちですが、それが保証できないのが妊娠です。旅行を間近に控えた時期や旅行中に体調のトラブルが起きてしまった場合は、臨機応変に無理のない判断ができるように心がけましょう。「自己責任で決めましょう。」と言っても、なかなか決断できないものです。迷う時は、迷うまでに至る何かしらの原因があるのですから、思い切って旅行は中止するのが一番です。

回答いただいた助産師さん

大谷紗弥子さん

  • 聖母病院(東京都新宿区)勤務。
    妊産婦さんやそのご家族が安心して新たな家族を迎えられるようにサポートをするかたわら、妊娠前の女性や妊婦さんへの食育やマタニティヨガを通して、女性のからだづくりにも携わっている。

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