持田ヘルスケア株式会社

助産師に聞く 妊娠後期のQ&A

助産師に聞く 妊娠後期のQ&A

妊娠後期の悩み・不安

出産を間近に控えた妊娠後期は、からだだけでなく、心も不安定になりがちです。
ひとりで抱え込まずに、助産師さんに相談をして残り少ない貴重な妊娠期間を存分に楽しみましょう。

Q.

帝王切開について教えてください

どのような場合に帝王切開になりますか?
手術はどのように行われますか?
術後はどのぐらい動けますか?
妊娠中に準備しておくことは?

A.

出産を控えた妊婦さんにとって、出産方法について気がかりなことも多いのではないでしょうか?

お母さんや赤ちゃんに様々な問題が生じることで、経膣分娩が無理であると判断された場合、お母さんや赤ちゃんの安全を守るために、おなかと子宮を切って赤ちゃんを取り出す分娩方法があります。これが“帝王切開”です。

帝王切開には“予定帝王切開”と“緊急帝王切開”があります。

予定帝王切開
妊娠中から経膣分娩が難しいと考えられる場合、あらかじめ手術の日にちを決めて行われるのが予定帝王切開です。だいたい妊娠37〜38週の間に手術の予定が組まれます。予定日に近づくにつれて手術前に陣痛が始まったり、破水してしまったりすることで緊急帝王切開となる可能性が高くなるからです。

予定帝王切開になるのはこんなときです。

逆子・多胎妊娠(双子以上の妊娠)
経膣分娩では赤ちゃんへのリスクが高く、帝王切開の方が安全なためです。

前置胎盤
胎盤が子宮の入り口を塞いでしまい、大出血を起こすため経膣分娩ができません。

外陰ヘルペスやAIDSなどの感染症
産道で赤ちゃんが感染してしまうのを予防するためです。

そのほかに、以前の手術で子宮にメスを入れていた部分から子宮が破裂してしまうリスクが高い前回帝王切開や子宮筋腫手術後の場合、お母さんの骨盤と赤ちゃんの頭の大きさが合わず、赤ちゃんが通り抜けてこられないといった児頭骨盤不均衡の場合などは、医師の判断により、予定帝王切開を選択したり、帝王切開の可能性も考慮しながら経膣分娩に挑戦することもあります。

緊急帝王切開
緊急帝王切開は、お産が始まってから何らかの原因でお母さんもしくは赤ちゃんが危険な状態となり、一刻も早く赤ちゃんをおなかから出してあげなければいけない場合、または、妊娠・分娩を終了して母体の安全を確保しなければいけない場合に行われます。

緊急帝王切開になるのはこんな時です。

胎児機能不全
何らかの理由でお母さんから赤ちゃんに送られる酸素の量が少なくなってしまい、赤ちゃんが弱ってしまう状態のことです。

臍帯脱出・下垂
赤ちゃんに酸素を送る命綱である臍の緒が、赤ちゃんより下に下がってきてしまったり、子宮口から膣内へ出てきてしまうことです。臍の緒が子宮の壁と赤ちゃんの間に挟まれることによって赤ちゃんに酸素が送られにくくなり急速に赤ちゃんが危険な状態に陥る可能性があります。

分娩遷延・停止
陣痛が始まってから、陣痛が強くなりきらず2時間以上にわたって分娩の進行がみられなくなることです。状況によっては陣痛促進剤を使用してみることもありますが、それでも分娩が進行していかないときや赤ちゃんが弱ってきてしまった場合に帝王切開を選択することがあります。

重度の妊娠高血圧症
妊娠中・分娩中に関わらず血圧上昇やそれに伴う頭痛などの症状、蛋白尿などが現れた場合、お母さんを守るために妊娠・分娩を終了させなければなりません。

常位胎盤早期剥離
何らかの原因で分娩前に胎盤が剥がれてしまうことです。

子宮破裂
前回帝王切開、子宮筋腫手術後などで子宮にメスを入れたことがある場合や、陣痛促進剤の副作用で陣痛に伴い子宮が破裂してしまう事があります。

このように、帝王切開はどの妊婦さんにとっても可能性のあることなのです。
そのことについては、ご家族にも理解をしておいていただき、お産に臨む際は、ご家族皆さんで心構えをしておきましょう。
また、手術の流れについても知っておいた方が安心です。事前に出産予定施設に確認しておくとよいでしょう。

帝王切開手術の流れはこちら>>

手術前
予定帝王切開の場合は、妊娠中から手術の準備が始められます。
お母さんの体が手術に耐えられるかどうかの検査をします。血液検査とレントゲン、心電図などです。
緊急帝王切開の場合は、必要最低限の検査を行います。状況によっては、検査をする余裕もなく手術に臨まなければいけない場合もあります。

手術が決まったら、医師より手術が必要な理由や手術に伴うリスクについての説明を受けた上で、同意書にサインをします。

手術中
多くの場合は、下半身だけに効く麻酔を使用します。麻酔が効いてきたら、手術がスタートです。
おなかはお臍の下を縦に切るか、恥骨の上を横に切ります。20cm前後の傷です。その妊婦さんにとって安全な方を医師が選択します。
手術にかかる時間は約1時間です。手術スタートから赤ちゃんの誕生までは5分程度です。全身麻酔でなければ産声もわかり、すぐに対面することもできます。

手術後
手術後は、経過がよければ翌日から食事が始まります。また、血栓予防のために翌日から歩き始めます。歩けたらおしっこの管を外します。
お母さんと赤ちゃんの状態が安定していれば赤ちゃんとの対面や授乳は早い時期から始めることができます
シャワーは医師が傷の状態を診察して許可が出てからになります。個人差はありますが、傷は5日目くらいには塞がっている場合が多く、1ヶ月健診の頃には痛みもほとんどなくなります。

今回は、一般的な帝王切開の方法についてご紹介しましたが、病院の方針や主治医の考え方によって、異なる部分があるかもしれません。出産予定施設に確認しておくとよいでしょう。

できれば経膣分娩を・・・と、妊娠中から規則正しい食生活、運動など様々な努力をしてきた妊婦さんにとって帝王切開という選択はショックなことかもしれません。しかし、赤ちゃんとお母さんの安全のためには時に必要な選択です。
帝王切開は決して楽な分娩方法ではありません。麻酔を使い、おなかを切開するのですからそれなりのリスクが伴います。それに耐えられる体力と手術後の順調な回復には、やはり体づくりが大切になってきます。ですから、それまでの体づくりは決して無駄ではないことを覚えておいてください。

回答いただいた助産師さん

大谷紗弥子さん

  • 聖母病院(東京都新宿区)勤務。
    妊産婦さんやそのご家族が安心して新たな家族を迎えられるようにサポートをするかたわら、妊娠前の女性や妊婦さんへの食育やマタニティヨガを通して、女性のからだづくりにも携わっている。

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