助産師に聞く 妊娠後期のQ&A
助産師に聞く 妊娠後期のQ&A
妊娠後期の悩み・不安
出産を間近に控えた妊娠後期は、からだだけでなく、心も不安定になりがちです。
ひとりで抱え込まずに、助産師さんに相談をして残り少ない貴重な妊娠期間を存分に楽しみましょう。
Q.
陣痛促進剤とはどんなものですか?
どのような場合に、どんな風に使いますか?
使わないでお産するためには、妊娠中に何をすればよいでしょうか。
A.
陣痛促進剤に関心のある妊婦さんは多いようです。
陣痛促進剤に関しては、さまざまな情報が飛び交うことがあり、何が正しい情報なのか、どんな選択をしたらいいのか困惑してしまいますね。
妊娠・分娩の経過において、陣痛促進剤を使ってお産を進めた方がよい状況となる場合があります。理由としては、有効な陣痛にならずお産が進まない、お産を急がないと赤ちゃんに危険がある、予定日が過ぎたけどお産が始まりそうにない、破水をしたけど陣痛が来ない、などといったことです。
陣痛促進剤の使用に関しては、使用の適応や使ってもよい条件、使ってはいけない場合など安全に使用されるためのルールが決められています。
陣痛促進剤を使用する際、医師は、効果や危険性についての説明をし、同意を得てから始めます。陣痛促進剤には、過強陣痛やそれに伴って子宮破裂を起こしたり、急激な陣痛のストレスで赤ちゃんの具合が悪くなったりする危険性があります。
薬の効果は身長や体重、薬を使い始める時期によって人それぞれです。
少量でもすぐに効く人もいれば、なかなか効果のない人もいます。
そのため、促進剤の量を微量に調節できる輸液ポンプを使用し、ほんの少しの量から始めます。輸液ポンプを使う理由は、いきなり陣痛が強くなったり、赤ちゃんが苦しいサインを出してきた場合、すぐに点滴の量を減らしたり、点滴の使用をやめたりし、急変に備えるためです。
そして、陣痛促進剤を使用中は、分娩監視装置をお母さんのおなかに付け、陣痛の強さと間隔、赤ちゃんの心拍数を常に観察をしながら、ゆっくり薬の量を増やしながらお産を進めていきます。
極力、陣痛促進剤を使わずに自然なお産をするためには、まずは、妊娠中の体づくりが必要です。
妊娠は自分の体と向き合うことができるとてもいい機会です。
<運動>
おなかが張りやすいなどの症状がなければ、日常生活にウォーキングなどを取り入れるのもいいでしょう。マタニティヨガ、マタニティ水泳などを行う場合、医師からの診断書が必要な場合もあります。医師と相談のうえ、体調に合わせて行いましょう。
<食事>
体力をつける=運動だけではありません。
栄養バランスのよい食事と、きちんと3食摂ることも大切な体力づくりの一つです。整った食生活は妊娠中に起こりやすい貧血や妊娠糖尿病、妊娠高血圧症などの合併症の予防にもなります。また、適切な体重増加は、体力の維持・増進にもつながります。
<冷え予防>
足や手、おなかの冷えを予防し、血液の循環を整えましょう。
靴下を履く、腹巻をする、体を温めてくれる飲み物・食べ物を摂る、温かいお風呂にゆっくり浸かることなどを生活に取り入れるようにしましょう。
次に、できる限り自然の力で陣痛が強くなりお産を進めるためにみなさんができることです。
<座る・歩く>
重力は陣痛促進の強い味方です。ずっとベッドに横になって過ごすよりも、座ったり、歩いたり、階段の上り下りをする等、起き上って過ごしましょう。歩いている最中に陣痛が来たら、立ち止まったり、しゃがみこんで陣痛を逃します。このような過ごし方は、赤ちゃんが下に降りてきやすくする助けとなり、お産を進める効果があります。
<入浴>
破水をしていなければ、お風呂に入ることをおすすめします。足浴でもいいでしょう。
体を温めると、リラックス効果や、痛みを和らげる効果があります。また、血液の循環が良くなるので陣痛が強くなりお産が進んでくることも多いのです。
<食事>
頑張りきる体力を維持するために、飲まず食わずではいけません。食べられる時に食べられる物を食べましょう。すぐにエネルギーになるようなバナナ、おにぎりなどがおすすめです。口当たりの良いゼリーやプリン、アイスクリームでもOKです。
いざ、陣痛が始まると「痛くて辛いのに、そんな余裕ない!」と思うかもしれません。しかし、お産を進めるには陣痛は必要不可欠なものです。
「自然の力で陣痛を強くする」ということはそれなりの努力をしなければなりません。“陣痛が来てくれるのを待つ”のではなく“陣痛を迎えに行く”くらいの気持ちで挑みましょう。
回答いただいた助産師さん
大谷紗弥子さん
- 聖母病院(東京都新宿区)勤務。
妊産婦さんやそのご家族が安心して新たな家族を迎えられるようにサポートをするかたわら、妊娠前の女性や妊婦さんへの食育やマタニティヨガを通して、女性のからだづくりにも携わっている。