持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第9回】
~ 赤ちゃんと笑顔 ~

入選

キラキラ笑顔

石川県  主婦  31歳

娘を出産したのは去年の夏だった。出産の痛みは鼻からスイカとはよく聞いていたが、本当に想像以上だった。助産師さんから「頭が見えてきたからあと少しよ。」と言われてからあっという間に3時間が経過し、その時点で陣痛の苦しみから18時間。心身ともに疲れ果てた私とさすがに長引く出産で心拍が早くなってしまった赤ちゃん。即、緊急帝王切開となった。
気がついた時には、赤ちゃんはもう生まれていた。そしてお腹を切った痛みが残っていた。残念ながら私はすぐ赤ちゃんを抱く事はできず、ちゃんとしたご対面は二日後になった。
ご対面当日、助産師さんが部屋に赤ちゃんを連れてきてくれた。「はい、あなたの赤ちゃんよ。かわいいわねー。」私は、そっと腕を出し、まだ、目もろくに開けられず、真っ赤なしわしわな顔のその赤ちゃんを抱っこした。初対面で感動という気持ちよりもこの子が私の生んだ赤ちゃんなんだーと不思議な気持ちで見つめていたら、急に赤ちゃんの口角があがり目をつむったまま、ニコーっと笑みを浮かべた。かわいいーっと思った。そして私も笑顔になる。と同時に目も開いていないのに、どうして笑顔になれるのだろうと思った。私が母親だということがわかるのだろうかと思った。後にそれは原始反射というものだと知って少なからずショックだったのだがこれが、一番初めに見た娘の笑顔だった。
一ヶ月実家で静養し、そこからは自宅へ戻って夫と赤ちゃんとの三人生活が始まった。子育ては想像以上にハードだった。産後まだ自分の身体が万全でない中、昼夜の区別のつかない赤ちゃんを育てるのは本当にしんどかった。相変わらず原始反射で寝ている時は笑顔を見せてくれるものの起きている時はほとんど泣いていた。初めての育児でどう対処していいかわからず正直辛いと思う日々が続いた。
それは2ヶ月に入る少し前の事だった。朝、娘のオムツを取り替えていた時、娘は無表情で私の顔をじーっと見ていた。私はいつものように通じてるか通じてないかはわからないがとりあえず「はい、オムツ替えますよー。」と声をかけた。とその時、娘が私を見て、笑ったのだ。何がおかしかったのかわからないが、その笑顔がかわいくて私も笑ってしまった。それから娘の笑顔はだんだん増えていった。
パパが歌をうたうと音程がはずれているのがわかるのかよく笑う。物と物をカチカチたたいて音がするとニコーっと満面の笑みを浮かべる。自分の知っているキャラクターがテレビに出てくると本当にうれしそうに笑みを浮かべてテレビに近寄っていく。ある時は、ティッシュを全て引き抜いてしまって最後の一枚をビリビリーっと破いて、怒る私を無視して本当に楽しそうに笑っている。つかまり立ちができるようになると、立つ度に私の方を見て、キラキラした笑顔で訴えてくる。「ママ、見て!立てたよ!」と言っているように。そのどれもが、本当に純粋で単純で、自然とこちらまで笑顔になってしまう。赤ちゃんって本当にたくさん笑う。子育ては決して笑顔で終わることばかりではなく、むしろ肉体的にも精神的にも本当に大変なのだけれど、この度々見せてくれる笑顔で今日も明日も明後日も頑張れるのだ。ただ漠然と子供が欲しいと思っていた私が、出産、育児の大変さを知り、こうして一日一日子供の笑顔に励まされながら母になっていく事を実感する。我が子だけでなく、赤ちゃんは、本当に皆よく笑う。そしてそのどれもが本当に素直で偽りない。子供を連れているといろんな方に声をかけられる。それはきっとこの屈託のない笑顔に皆引き寄せられるのだ。母親として大人として私は、これからも娘の真っ直ぐでキラキラした笑顔が絶えないように一緒に日々、成長していきたい。

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