【第8回】
~ 赤ちゃんとわたし ~
入選
長男と次男
千葉県 会社員 37歳
嫁は、「前置胎盤」での入院だった。
そして長男は、2000グラムを切る未熟児として帝王切開で産まれた。
長男は、保育器に入り、NICUですごしたが、特に異常もなく順調に育ってはくれたものの、心音を確認する電子音とたくさんの泣き声の中で1ヶ月を過ごしている。
毎週末に、車を飛ばし、除菌された服を着て、帽子をかぶり、数時間息子を抱っこして、ミルクをあげて、オムツを変えて、ビデオや写真を撮って、また帰ってくる。
1ヶ月の間、子供がいるのに、子供がいない。そんな変な生活だったのを覚えている。
家には使われることがないベビーベッドがドン!と場所をとっていた。
NICUにいたということもあるし、なかなか出来なくて本当に待望の子供だったこともあって泣いているわけでもないのに、1時間おきに様子を見て、ちょっと寝息が聞こえなくなれば鼻に耳を近づけて寝息を確認する。会社から帰ってきて、無事でいることを確認する。
「生きていることを確認する」本当に、そんな毎日だったのを覚えている。
あれから4年が経って、この5月に次男が産まれた。
次男は、3000グラムを超え順調に産まれて一週間後には退院してきた。
長男は、1ヶ月の入院生活ゆえに、3時間おきにミルクをもらうという規則正しい生活をして退院してきたので、本当に時計を見ているかのように3時間おきに泣いていたが、次男はそんな習慣もまだ身についていない、本当に「産まれたて」の状態で退院してきたため、自分も嫁もそのバラバラな泣きっぷりには、まいっている。
が、そこは二人目。
多少泣こうが、叫ぼうが、割と平然とそつなくこなしている。静かになれば、今がチャンスとばかりに食事をして、風呂に入る。4年の子育てという授業の結果、自分たちも少したくましくなっていた。
今、あんなに小さかった長男は、テレビ番組を見て、悪者と戦っている。そんな彼とは、一緒に買い物に行き、お昼ご飯を食べ、ゲームセンターで遊び、自転車に乗って。
まるで、仲のいい友人のように、休日を過ごす。
弟が出来てヤキモチを焼くかなと思ったけど、弟が泣けば「大丈夫だよー」と声をかけ、ミルクあげといてと、哺乳瓶を渡せばミルクを飲ませ、すっかりお兄ちゃんになっている。
ちょっぴり生意気に育った長男は、弟が出来たことを素直に喜んでいるようだった。
弟は、みんなからの「適切な愛情」の中で長男とは違う意味で逞しく育っている。俺の方を見ろ!とばかりに泣き声も長男よりも大きく、動きも何だか激しい。
長男の時も次男の時も飛び上がるほどのうれしさ。というのは、なかったのを覚えている。ただ、顔がにやけるような。そういうジワッとどこからか湧いてくるようなうれしさなのは覚えている。
長男の寝息を確認していたあの日から4年。こんな二人に挟まれて、狭いなー。と言いながら、ベッドに横たわり、二人の寝顔を見ながらニヤニヤしている自分がいる。
まさか、自分が子供の寝顔を見て、疲れとかを忘れるようになるなんて、思わなかったけど、まぁ、これでもうちょっと頑張れる。