持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第8回】
~ 赤ちゃんとわたし ~

入選

ちっちゃいけれどいっちょまえ

大阪府  主婦  42歳

「じゃあ、だっこして」
それは次女が産まれた翌日の長女の台詞。
それを聞いて初めて長女の気持ちを知った。
私は気にもとめていなかった随分前の事を思い出した。
2人めの妊娠が分かった時、長女に私が言った言葉。
「おかあちゃんのお腹の中に赤ちゃんがいるの。弟かな?妹かな?
もうすぐあなたはお姉ちゃんになるのよ。」
3才だった長女には、まだどう説明しても分からないだろうと思いながら報告をした。
長女は天真爛漫を絵に描いた様な子で、精神的な成長も普通の子より遅く感じられた。
そんな長女が、私は可愛くて仕方なく、ちょっと幼いと云う周りの評価も気にしていなかった。
興味のあるものには突っ走って行く彼女に振り回され、へとへとになる日々の中には
私を楽しくさせてくれる彼女の発見のお知らせが沢山あった。
彼女の見つけた虫。何かが飛んだと指をさし。
彼女が見つけた風。
見えないものが体に触れると言って、空中を手でかき回す。
彼女が見つけた陽射しの反射。
キラキラが動いてきれいねぇと指で追う。
いろいろな形の石。ポケットの中は石だらけ。
見つけたものを全部、私に嬉しそうに知らせてくれる。
この世のありとあらゆるものが面白いと彼女は私に教えてくれた。
お散歩をする時はいつも彼女が前で私が後ろをついて行く。
彼女の発見を妨げず、彼女の安全は見守れるように、ずっとそうしていた。
2人めの妊娠中も、私は道無き道を行く彼女と走り回る日々を楽しんでいた。
そんなだったから、気付かなかったんだ。
彼女は発見が大好きで、抱っこなんかせがまない。
自分の足で突っ走って行く。
そういう子で・・・・
長女の言葉に思い出した妊娠報告の日の会話。
「抱っこして」
「お腹に赤ちゃんがいるから駄目~。」
そういえば、あれから一度も「抱っこして」と言わなかった。
「もうお腹にあかちゃんいないの?」
「いないよ。ほら。お腹、ぺったんこ。あかちゃんはベッドで眠ってるよ。」
「じゃあ、抱っこして。」
何か月も、ずっと黙って我慢していたのを
この時初めて気がついた。
幼いと思ってばかりいた長女は、次女が産まれる前から、ひとり静かに、ちゃんとお姉ちゃんになってたみたい。
産まれた次女のお世話は4才の長女がしてくれる楽チンな日々が始まった。
そして18才の今でも長女は変わらない。
楽しい事がある度に私に報告し、たまにホロリと零すひとことは
私の心を刺してくる。
光ばかりを私に届け、影は自分の中に納めておいて、必要な時を狙ったように溜め込んだ影を零す。
ずっと見つめ続けていた自負のある私の心に、誰よりも子供達を知っていると云う欺瞞の心に
「お前、気付かなかったろ」とでもいいたげに。
今でも世間の18才より、よほど幼いくせに・・・
時々、私より遥かに大人で・・凹ましてくれる。
3才児に負けてたんだもんなぁ・・一生勝てないと思う。

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