持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第7回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

生後三日目、やっと会えたね

愛知県  会社員  30歳

「お母さん!今から赤ちゃん行くから、顔みといて!」
生後二時間しかたっていない息子を抱き、そう言いながら看護師さんが私の病室に飛び込んできた。今から、外で待機している救急車に乗せられ、総合病院のNICUに転送されるのだ。ゆっくりと顔を見ることもなく、遠ざかっていく救急車のサイレン音を聴きながら、涙がとまらなかった。
順調に進んだはずの妊娠期間、破水、入院。しかし、1日半に渡る微弱陣痛のため、羊水がにごり、赤ちゃんの状態が悪くなってしまい、急遽陣痛促進剤が投与され、吸引分娩にて出産することになった。十八分という短い時間で、半ば無理矢理ひきずり出されるように、この世に生を受けた息子は、呼吸状態が不十分なため、ほんの少し私に抱かれただけで離れ離れになってしまった。夢にまでみた我が子との“出会い”は、あまりにもあっけないものであった。
転送先の病院での検査の結果、息子の肺に汚れた羊水が入り込んでいたことが分かり、肺の洗浄の処置が行われた、と夜遅くに戻ってきた夫が教えてくれた。すぐにでも会いに行きたい。しかし急激に進められたお産の影響で、動けるようになったのは3日後のこと。車イスに乗せてもらい、ようやく息子の待つNICUに行くことになった。
この3日間、息子は薬で眠り続け、今朝ようやく目を覚ましたと、NICUのスタッフが教えてくれた。そして「できるだけたくさん、赤ちゃんに触れてあげて下さい。一番の薬になりますから。」という言葉に従い、おそるおそる保育器の中の、息子の小さな小さな手にさわると、今まで眠っていた息子が、左目だけをぽちょっと開けた。まるで「お母さん、僕だよ。会いたかったよ。」と言うように。
生まれてから3日後に、予想とは違うけれど、私と息子は“最高の出会い”をすることができた。
それからは、毎日産院から息子の病院まで会いに行った。最初、たくさんつけられていたチューブも、一本一本減り、六日目に初だっこ、九日目には初おむつがえ、十日目には初授乳をすることができた。ひとつひとつのふれあいがうれしくて、新しい出会いのように感じられた。当初一ヶ月かかるといわれていた入院は、十日間に短縮され、大きな問題を残すことなく、退院することができた。
現在十ヶ月になる息子のアルバムには、入院したての頃の、全身チューブまみれの写真は貼っていない。この写真は、息子が成長し、思春期を迎え、いつか自分の生き方や存在について悩みにぶつかったときに、初めてみせようと思っている。どんなに病院のスタッフが尽力してくれたか、家族がどれほど心配し応援してくれたか、そして何より息子自身がどれだけ「生きる」ことに頑張ったかを語りながら。そのおかげで、あなたと私は出会えたんだよって。

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