持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第7回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

嬉しい贈り物

京都府  主婦  35歳

10年ぶりに赤ちゃんを授かった。
長男が1歳の誕生日を迎えた頃から「そろそろ」と言う周りの声もあって、もう一人赤ちゃんが欲しいと思った。
長男は結婚後すぐの妊娠発覚。妊娠検査薬で「陽性」の表示を見た時は、嬉しいと言うよりも「赤ちゃんってこんな簡単にできるんだ」と驚いた記憶の方が強い。
それなのに
待てども暮らせども次の赤ちゃんは来ない。焦る私を尻目に、周りの友達は二人三人の子を持つお母さんになり、その子供達はどんどん大きくなって行く・・・。
とうとう息子が小学校に入り「もう無理かもしれない」と思っていた矢先、息子の9歳の誕生日前に、やっと妊娠が判明した。
誕生日当日、息子に「もうひとつプレゼントがあるよ」
と言うと、息子からすぐに「赤ちゃん?」と返ってきた。
私はその言葉に驚いたと同時に、
自分の視線がいつのまにか目の前の大切なものを通り越して、まだ手に入らないものばかり追っていたのかもしれないと、初めて気づかされた。こんなに元気に、大きく成長してくれた息子がいるのに。しかも息子にもその事を気づかせてしまっていたんだなぁ・・・と、オメデタイ話なのに自分を情けなく感じた。
安定期に入ったある日、息子に「学校で赤ちゃんの事を話してもいいよ」と言った。
するとその日の学級集会で手を挙げて「僕の家に赤ちゃんが産まれます!」と発表したらしく、クラスのお母さんからお祝いのメールが何通か届いた。後日参観日に行くと数人の女の子達が、少し大きくなったお腹を「触らせて」と恥ずかしそうに言い、そっと私のお腹をなでてくれた。
その後も、私のお腹の様子を息子は先生や友達に話していた。他人の家の赤ちゃんなど、誰もそれほど興味を持って聞かないだろうと思ったが、息子はそれでもおそらく無理やりにでも話し続け、最後にはとうとう自分で赤ちゃんの名前を決め、またまたそれを発表してしまった。
しかしそんな息子も私の出産が近づくにつれ、様子がおかしくなってきた。息子の質問は「いつ産まれるの?」から「いつ帰って来るの?」に変わっていた。ただでさえ「お母さんっ子」と言う決してほめ言葉ではない異名(?)を持つ一人っ子歴9年の息子にとって、母親とこんなに長く離れるのは初めての試練なのだろう。
だが当然、お腹の赤ちゃんはいつできるかわからない息子の心の準備など待ってくれるはずもなく、とうとう私は出産を迎えた。経産婦とは言え、もうすっかり出産から遠のいていた私のお産は想像以上に大変だったが、お産が始まって53時間後、ついに私は「おぎゃ~」と10年ぶりの産声を聞く事ができた。
この泣き声、このニオイ、この感触・・・。
やっとやっと会えた赤ちゃん。
新しい家族。
みんなキミに会うのを待ってたよ。
数日後、お見舞いに来る主人から「今日は特別なプレゼントがあります」とメールが届いた。
心待ちにしていると、主人が私に1冊の手作りのノートを渡してくれた。
それは、息子のクラスみんなからの寄せ書きだった。
表紙には黄色い産着を着て笑っている赤ちゃんの絵と「はやとくん おめでとう」と言う息子がつけた赤ちゃんの名前。
中には一人一人から赤ちゃんへのお祝いメッセージやイラストが書いてあった。
その中に
「はやと君、お兄ちゃんができてよかったね」
と言うメッセージがあり、なんだかとてもうれしかった。
今、隣の部屋で同じ方を向いて眠る、大きい背中と小さい背中。私が授かったのは赤ちゃんだけでなく、普段当たり前に感じていた、たくさんの優しさや、思いやりや、あたたかい気持ちだった。

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