持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第7回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

手を繋いで

福岡県  看護師  26歳

破水しています。早産になりますから、小児科のある病院を紹介しますので・・・。」
思いもよらない出来事は、産休に入って3日目、初めての平日にやってきた。たまにはおしゃれをして帰ってきたパパを驚かせようと、美容院に行った際に突然破水。妊娠34週2日目だった。
それまでつわりはあったっものの、いつも「順調」だった。正常分娩ができると信じ疑いも持っていなかった私。早産、なんていう想像はしていなかった。
「破水しているので、1日中にはお産になることが多いです。24時間以上経つと感染の危険性が高くなります。」
通っていた産婦人科の先生、紹介先の主治医の先生の話を聞き、何となく思う。
「陣痛が来ればいいんですけど・・・」。
私の予想は的中した。陣痛は待てど暮らせど来る気配がない。けれどなぜか感染もしないし赤ちゃんの心音が落ちることもなかった。採血で感染のチェックをして、陣痛促進剤を点滴する日が続いた。赤ちゃんは、出てきてくれない・・・。お腹は張りもしないし痛くもない。
助産師さんは、「お母さんのお腹の中が気持ちいいんですよ。」「おーい、でてこーい。」まったく反応しない児心音モニターを見ながら声をかけてくれる。「赤ちゃんはとっても元気ですよ」と言われれば、まあ、元気なんだからいいか、とお腹を撫でてみる。
「出てきてくれるかなぁ・・・。」
「薬で陣痛をつけるのは難しいようです。赤ちゃんのことを考えれば、そろそろ出してあげないと・・・。」
なんとそんな状況が続き妊娠35週を迎えてしまった。陣痛がつかない以外は異常はないが、お腹は明らかに小さくなっているしもう羊水も出てこない。話し合った結果、帝王切開での出産をすることになった。妊娠したからにはそんなこともあるかも、くらいにしか考えていなかった帝王切開術。身体は強くないが自然治癒力旺盛な私には始めての手術である。
初めての麻酔を受け、ベッドに横たわる。感覚の無い体が何かされている不思議な感覚。「押しますよ」といわれ、体がバインドするのがわかる。その瞬間「おぎゃー」と大きな声が聞こえた。やっと出てきてくれた・・・。涙が出て初めて気づく。こんなにも赤ちゃんを待っていたんだ・・・。
「アプガー8点、9点です」見えないけれど聞こえる。うろ覚えの知識だけど、それは赤ちゃんが元気だということだとわかる。そうしているうちに助産師さんが、小さな小さな赤ちゃんを抱いて、私へ見せてくれた。
これが私の赤ちゃん?陣痛もないし、痛みもなかったから産んだ実感は十分じゃない。だけどそろりと差し伸べた手を迷わずに、その子は握ってくれた。がんばったねって言ってあげたかったのに、先に言われてしまった気分だ。ついつい笑ってしまう。赤ちゃん、よろしくね・・・姿を目で追いながら心の中で呟いた。
赤ちゃんは、NICUに入ったものの僅か4日で卒業した。生理的体重減少をへて2000gを切った小さな赤ちゃんだったが、物凄い飲みっぷりでミルクのノルマもこなし、「もう普通の赤ちゃんとして育てて大丈夫ですよ。」と、私と一緒に退院できた。そして3ヶ月もたったころには「大きな赤ちゃんですね。」と言われるくらい立派に成長してくれた。
私は至らないママだったが、赤ちゃんは一から十まで教えてくれる。嫌だったら泣く、不快だったら泣く、そして、正解を見つけ出したら笑ってくれる。
「初めて会ったとき、こんな風におててをつないだんだよ。」たびたび赤ちゃんに語りかける。同じ温もりの手を繋ぐ。これから先も、ずっとずっと手を繋いでゆきたいと願う。赤ちゃんはどんどん大きくなって、気づいたら私と同じようにこうして赤ちゃんを見つめてるかもしれない。だけど必要なときには手を差し伸べよう。あなたがしてくれたみたいに・・・。
いつか大人になったら、あなたに伝えよう。「あなたが手を繋いでくれてとても嬉しかったよ」というこのお話を。

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