持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第7回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

「ふーくん」

大阪府  主婦  41歳

驚いたことに、私の赤ちゃんは、とんがり帽子をかぶってやって来た。
吸引分娩で生まれたために、頭が三角だったのだ。
「あ、あたまが・・・」
これが、赤ちゃんと初めて対面した私の第一声だった。
「大丈夫ですよ。元に戻りますから。」
看護師さんの言葉通り、数時間後におっぱいを飲みにやって来た赤ちゃんの頭は、普通の形になっていた。
良かった。
ようやく感動の対面。
両眼を開けることができないようで、片眼はつむったまま、ミャーミャーとネコみたいに泣いている。
なんて小さくて、なんてかわいいんだろう。
お腹の中にいた時に呼んでいたように、そっと「ふーくん」と呼んで抱きしめた。
朝起きて夜眠るのがあたりまえだった生活は、ふーくんの登場により、24時間が3時間×8のサイクルに変わった。
朝も昼も夜もおかまいなく、おっぱい、おしめ、おっぱい、おしめの繰り返し。
そんなことも全然苦にならないくらい、ふーくんとの生活は、幸せに満ちていた。
毎日が驚きと発見の連続で、一日はあっという間に過ぎていった。
ある日、いつものようにふーくんに話しかけていると、ふーくんがじっと、私の顔を見つめているのに気がついた。
ふーくんの眼が見えてきている!?
わざと顔を動かすと、それを追って、ふーくんの眼もキョロリと動く。
うっすらと、ものが見えてきているのかもしれない。
こんなこともあった。
うつぶせ寝をしていたはずのふーくんが、ご飯の用意をしている間に、仰向けになっていた。
えっ?寝返りしたの?
ふーくんに聞いても、私の顔を見て笑っているだけ。
いろんなことが出来るようになる時、まっ先に眼にするのは、いつも私だった。
一日中、ふーくんとずっと一緒にいたから、ふーくんのことなら何でも、私がいちばん良く知っていた。
パパは、そんな私をうらやましがって、ふーくんに「パパ」という言葉を覚えさせようとがんばっていた。
仕事から帰って、ふーくんを抱き上げては、
「パパですよー」
お風呂に入るときも、
「パパとおふろですよー」
その甲斐あって、ふーくんがいちばん最初に話した言葉は「パパ」だった。
もちろんパパは大喜び。
赤ちゃんが家にいる。
それだけで、一日、一日がとても大切に思える。
楽しいことがいっぱいあって、パパも私も笑顔になる。
小さな寝息をたてて眠るふーくん。
ふーくん、よく来てくれたね。
これからも、ずっとずっと一緒にいようね。

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