持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第7回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

大切なもの

神奈川県  専門職  30歳

「おめでとうございます!レッドとブラック&タンの可愛い赤ちゃんですね」
ご家族に向けてこんな言葉をかける私は、動物のお医者さんです。
犬は安産の神様、なんて言われますが、帝王切開の確率は割と高いのです。お母さんのお腹から出たばかりの子犬がまだ呼吸をしていないのは人間と同じ。身体をさすって、羊水を吐かせて、初めてのか細い鳴き声、キューン・・キャウキャウ・の可愛いこと・・!
今まで動物の赤ちゃんばかり関わってきて、自分の赤ちゃんは欲しいけれどまだ先、なんて考えていた私も、赤ちゃんを授かることができました。幸い、つわりもなく、妊娠生活は順調そのもの。仕事もずっと続けていました。
そんな中、赤ちゃんの成長とともに、私の中でだんだん何かが変わってきました。
妙に町中の赤ちゃんが気になり出す。妊婦さんが増えたような気がする。動物病院に一緒に来る子供さんに、必ず年齢や名前を聞くようになる。
段々お腹が目立つようになると、飼い主さんから「何ヶ月?」「男の子?女の子?」とたびたび質問されるようになりました。同じ質問に何度答えようと、そのたびにうれしくてうきうきしていました。
予定日から一週間経った日、病院の猫と遊ぼうと身を屈めたとき、破水が起こりました。まだ陣痛は全く無かったけれど即入院。ようやく会える赤ちゃんのことを考え、心弾みました。
破水から10時間後、話には聞いていたけれどここまでとは・・・壁を叩きたくなるほどの陣痛!うーん!うーん!と声を出さずにはいられない。
人間のお医者さんが「これは吸引しなければだめだ!」と吸引器を装備、バキュームの音とともに出ました!私の赤ちゃん。まさに赤子!元気な産声!
私は胎盤が破けたらしく、後産の方が痛かったくらいなのですが、その間もずっと赤ちゃんが気になって、身体を拭かれる姿を見ていました。
ようやく落ち着いて、看護師さんに腕枕させてもらった赤ちゃんと、初めての写真をパチリ。
私は髪はぼさぼさ、徹夜ですっぴん、目の下にはクマ。赤ちゃんはこれ以上ないくらい泣きすぎで真っ赤、指が頬に添えられて大きな口はまるでムンクの叫び・・。
こんな写真が、今や私の宝物です。
出産後、飼い主さんに「赤ちゃんどう?」と聞かれるたびに、今までだったら絶対に見せることのなかったひどい顔の写真を喜々として見せている私・・。
「まあ可愛い」「ころころ健康そうね」「もうちょっと良い顔の写真飾ってあげればいいのに」といろいろな感想をいただきましたが、どんなご意見もうれしいのです。
赤ちゃんと出会えて、私の大切なものは変わりました。

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