持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第6回】
~ 赤ちゃんが教えてくれた喜び ~

入選

最高のプレゼント

【一般部門】 兵庫県  学生  25歳

パソコンのメールチェックをしながら一日が終わろうとしていた。
その中に実家の父からのメールがあった。添付メールである。
開いてみると、生まれたばかりの私をベビーバスに入れている母の写真とメッセージだった。
1980年7月27日 章史、君が生まれた。
その日の朝、お母さんはお父さんが仕事へ出かけるとき一緒に電車に乗ったのです。途中の駅で降りて、一人で病院へ向かったのです。小さなバッグを一つだけ提げて、君を生むためにたった一人で病院へ入ったのです。そして一人で君を生んだ。
あの時一緒にいてあげればよかったと、今更ながら思います。母になるということはそういうことなのですね。そうやって君は生まれたのです。4000グラムを超えていました。今は小さく生んで大きく育てるようですが、あの頃はそんなこともなく、二人分の栄養を取るためによく食べていました。
あの頃、お母さんはベッドのそばにいつも果物かごを置いて、気がつくとバナナを頬張っていたのを覚えています。
とにかくお腹が空くと言っていましたが、あれはこの日の君のための食事だったのです。
十月十日間、生まれる前から君とお母さんは、毎日一緒に食事をしていたのですね。そんな絆があるのだから、母が子を思う気持ちに勝てるわけがありません。
命の誕生を成し遂げて、君の命を手にしているお母さんの顔がこんなに美しいのは、比べるものなどありません。そう思いませんか。
次に出てきたのは、1歳の誕生日の写真とメッセージ。
君が目を覚まして眠りにつくまで365日、君の成長を見守ってきたこの日のお母さんは、1歳の誕生日と、育児1歳の喜びをかみしめていた筈です。こうしていつも君の傍にはお母さんがいたのです。
君の声が家中に溢れていた。お母さんを見上げて懸命に話しかける君の言葉が、日増しに増えていくのを、ワクワクしながら聞くのがたまらなく嬉しかった。
この頃の我が家は、全てが君を中心に回っていた。
遊び疲れて眠ってしまった後にも、君の寝顔を見る楽しみが残っていた。朝はいつも君が一番に起きた。私たちのベッドへ上がってきて、もう少し眠りたいところを起こされてしまったけれど、
そういう目覚めの喜びは君が教えてくれたのです。
君が生まれてから、どこへ行くのも君と一緒だった。
私とお母さんの世界へ君が加わって、家族という世界が始まった。
その中心は、もちろん君だ。三人で始めて体験する世界に、私とお母さんはすっかり夢中になった。二人だった時に知っていた世界と、三人になって知る世界はまったく違った。
新しい発見の連続に興奮し、言葉にならない喜びに満たされた。
小さい君が教えてくれた喜びは、とてつもなく大きかった。
それは口に出さなくても、お母さんの顔を見ればわかった。
だって、お母さんのこんなに嬉しそうな顔を見たのは、お父さんも初めてだよ。
家族って、いいなぁ。そう教えてくれたのは君だった。
明日は君の誕生日、おめでとう。
初めて知った自分の誕生と、両親の気持ちに感無量である。
今までで一番嬉しい誕生日プレゼントをもらった。

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