持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第5回】
~ 赤ちゃんと笑顔 ~

入選

幸せいっぱい…☆

【看護師助産師部門】 愛知県  看護学生  22歳

私はある総合病院に看護実習に来ており、初めての分娩室実習だった。私自身、出産を経験したことはなく、命の誕生の瞬間に立ち会えることでドキドキしていた。
「看護学生の○○です。お産まで一緒に付き添わせて頂きます。よろしくお願いします」と私が挨拶をすると、産婦さんはにっこりと微笑んで下さった。柔らかい表情だったが、どこか不安気に見えた。白い壁に囲まれてカーテン一枚で区切られた中で、ベッドに横になっていた産婦さん。ちょっと寂しそう…。まだ、痛みに余裕があったため、私はベッドサイドで産婦さんとお話をしながら、一緒に赤ちゃんが降りてくるのを想像したり、前回の出産場面を振り返っていた。すると、「早く出ておいで」産婦さんはお腹をさすりながら赤ちゃんに言った。思いが伝わったのか、急速に陣痛が強まり発作の間隔が短くなっていった。陣痛に苦しむ産婦さんを目の前に、私は心苦しくなってきた。
私には何が出来るのだろう…分からなくなってくる。
「お水飲みましょうか」「腰をさすりましょうか」「身体の向き変えてみますか」と、その時の私が思いつくことを声を掛けてみる。しかし、「まだいいよ…大丈夫」と産婦さんは目をつむって痛みを逃していた。どうしてあげることも出来ない…。この時、私は自分が看護学生であることを忘れ、出産に立ち会う父親の気持ちになっていた。陣痛に耐える姿を見て、痛みを代わってあげられないもどかしさを感じ、また、自分の力の無さを感じた。
お母さん、頑張って。 赤ちゃん、頑張って。
私は、頑張るお母さんを見ながら心の底から応援した。
子宮口が9㎝開き、分娩室に移動した。産婦さんは眉をひそめ、痛みを逃すのにも声が漏れる。「痛い……痛い……」
私はお腹を触ってみた。赤ちゃんがさっきよりも下に降りている。胎児の心拍もだんだん下の方で聴診が出来る。私は、内診は出来ないが確実に赤ちゃんが降りてきていることが分かった。
「赤ちゃん頑張ってますよ。もう少しですよ」という声かけに、産婦さんは、陣痛の痛みで身体をひねりながら、呼吸を乱しながらうなづいた。私は産婦さんの手を握り、一緒になって呼吸法を誘導した。それからしばらく、産婦さんと必死になって息をした。
高まる気持ちを落ち着かせながら、赤ちゃんにたくさんの酸素を送るために、お母さんはこんなにも一生懸命になっている。赤ちゃんも狭い産道を通るのに苦しいだろうけど、お母さんも一生懸命だ。
助産師さんの「大丈夫、順調よ」という言葉を聞いて、汗いっぱいの産婦さんの顔にも笑みが見えた。分娩室にスタッフが勢揃いし、赤ちゃんが出るのももう少し。私は胸が熱くなった。
黒いものが見えた。赤ちゃんの髪だ!
次のいきみと共に、赤ちゃんがぐんぐんと出てくる。
目をつむってぺしゃんこになった顔が出た!そして腕、身体と出てきた!
「おんぎゃ~!!」赤ちゃんは小さい身体で精一杯泣いた。
「おめでとうございます!」産婦さんは赤ちゃんを見て「かわいい…パパに似てる」と笑った。その安堵の顔、幸せいっぱいの表情からは、一仕事を終え“母親らしさ”がより強くなったように見えた。私も涙が出るほど幸せな気分だった。
赤ちゃん頑張った!お母さん頑張った!!
初めての共同作業、大成功。
大切なのは、赤ちゃんの生まれてくる力とお母さんの生み出す力。母親は強い。そのことを私は実感させてもらった。
あれから半年…。今、私は助産師になるために勉強している。両親から引き継いだかけがえのない命を、この世に生み出すお手伝いが出来ることが本当に嬉しい。幸せをいっぱいもらっています☆

ページの先頭へ

電話をかけて相談・問い合わせる

お問い合わせ 0120-01-5050
(9:00~17:40 土、日、祝日、会社休日を除く)

PCサイトを表示する