持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第5回】
~ 赤ちゃんと笑顔 ~

入選

今日からお母さん

【一般部門】 徳島県  主婦  31歳

平成15年1月30日。長引く微熱を『正月疲れが出てちょっと過労気味かな』って思っていた。『仕事も10日以上休んでるし、この際きっちり調べてもらおう』と病院へ出かけた。その前日は徳島には珍しく大雪が降り、道路にはまだ雪が残っていた。雪に慣れていない徳島県人はゆっくりしか運転できず、かなり渋滞していた。病院へ向かう道中、ふと思い立ち途中の薬局で妊娠検査薬を買った。結局、病院へ行かず自宅へ帰るとトイレへ駆け込んだ。待つこと数十秒。『妊娠してる~!』。妊娠検査薬にははっきりと陽性反応が出ていた。
「ちょっと、ちょっと。妊娠したかも。」
と興奮しながら、雪のため自宅待機中の夫に言うと、
「ちゃんと病院で診てもらえ。」
と軽く流されてしまった。でもこの日は私にとって忘れられない日になった。
あの日から8ヶ月余りが過ぎた10月6日。微弱陣痛が2日間続き、体力も限界にまできていた私は、3日目の午前11時前、陣痛を強くする点滴をしながら分娩台の上にいた。点滴を始めるとすぐに今までより強い陣痛が始まった。ごはんものどを通らない。もういきみたくて仕方がない。でも、まだ子宮口は5センチしか開いてない。午後3時前助産師さんから
「もう、子宮口全開したからいきんでええよ。」
といわれたときは、もうすぐわが子に会えるという気持ちと、もうすぐ楽になれるという気持ちですごくうれしかった。それから5~6回いきむと、ズルっという感覚とともに無事生まれてきた。午後3時38分。2,875gの元気な女の子。その産声を聞いたとき、もうかわいくて、うれしくて仕方なかった。
助産師さんがきれいにしてくれたわが子を抱かせてくれた。
「おっぱい飲ませたげてな。」
といわれ、教えられたとおりに抱っこして、ぎこちなくおっぱいを含ませる。一生懸命吸っている!『ああ、私はこの子のお母さんなんだ』という気持ちでいっぱいになった。小さい手、小さい足、小さい口。本当に何もかもちっちゃくてかわいい。こんな小さな体で一生懸命生きようとおっぱいを吸っている。出産に立ち会ってくれた夫と母を見る。二人ともものすごくうれしそう。『母もこうして私を産んでくれたんだ。』とありがたい気持ちでいっぱいになった。そのとき、ふと思い出して夫に妊娠発覚時、うれしくなかったのかと聞いた。夫は
「めちゃくちゃうれしかった。あれからすぐにいろんな人に『子供ができる』って電話した。」
と答えた。それを聞いた私は今までの胸のつかえがとれ、本当にこの子を産んでよかったと思った。
出産から6日後、退院の日。入院中私を担当してくれた助産師の実習中のMさんと一緒に写真を撮った。彼女はへその緒を切ってくれた人だ。彼女には本当にお世話になった。今は横浜の病院で助産師として立派に活躍していることと思う。
みんなに支えられ、愛されて生まれてきたわが子。そのことを忘れないようにしなければ、また子供にもそう教えなければと、私の横で遊んでいる娘をみてそう思った。

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