【第5回】
~ 赤ちゃんと笑顔 ~
入選
奇跡ってある!!
【一般部門】 熊本県 主婦 47歳
主人に妊娠を告げると「本当かー?!やったね!!あきらめんでよかったー!」
・・・えっ?あきらめてなかったの?
それはこの20数年間で初めて見せたと言っても過言ではないほどの笑顔の主人でした。
私はといえば、どうして今頃?という戸惑いの気持ちで一杯で咄嗟に決して言ってはいけない言葉を主人にぶつけると「何を言ってるのか自分で分かっちょっとかー?!」と仁王立ちの怒りで震えている主人でした。
でもね、あの時は言えなかったけど本当は誰よりも私が一番嬉しかったんだよ!踊りだしたいくらいに!だって長男が生まれて17年間も不妊で苦しんだのは私たちだからね!
そう。37才をタイムリミットと決め不妊治療をし、そして諦め、それから5年経ちやっと妊婦の人を見ても羨ましいと感じなくなり、3人だけの生活を受け入れ歩き始めていたのに・・・。
もう1人この妊娠を告げて笑顔を見せてくれた家族がいます。それは17才になる長男。当時「退学したい宣言」をし、それを反対する私たち夫婦に心を閉ざし背を向けていた長男・・・。
それが一瞬でしたが笑顔を見せたんです!そして「男の子なら良いな」と一言。
私この時一筋の明るい光が暗闇の中をさまよっている私たちを導いてくれてるように感じました。そして確信したんです。「きっとこのお腹の子は私たちを助けに来てくれるために授かったんだ」と!そして産む決心をしました。
やっと私にも心から喜び笑う事が出来た瞬間でした。
あっ!忘れてはいけないもう2人喜んでくれた家族がいました。それは私の義母と実母。「こりゃーなかなか老いられんねー。もうちょっと頑張って生きんとねー!」と。
平成13年10月15日の深夜11時頃、ふと気が付くと病院の分娩室で痛みに耐えながらウーンウーンとうなっている私の傍らには長男が壁に向かって立っています。
陣痛と陣痛の合間に私と同じ歳だという助産婦さんとの会話で同じ年の息子がいてそれも息子の事で同じ悩みを抱えていることが分かり、粋な計らいをしてくれた助産婦さん。どのように言って息子をこの分娩室に呼んでくれたのかは分かりませんが、出産に立ち会ってくれています。
ご主人は?と思われたでしょう?当の主人は足が震えて歩けないそうで隣の控え室で卒倒しかかっていたそうです。
超高齢出産でしたが分娩時間5時間15分でそれは元気な産声で生まれてきてくれた次男。
ほっと息をついて傍らに立ち尽くす長男をそっと見ると涙一杯浮べている顔に出会い胸が一杯になったのを今でも忘れません!
そして生まれたばかりの弟をじっと見つめる嬉しそうな目。それを見て助産婦さんも自分のことのように喜んでくれ、みんなの喜びの笑顔でぱーっと明るくなったもうすぐ日付が変わろうとする分娩室でした。
その長男も翌年には無事卒業式を迎えることが出来、今現在はよき兄貴ぶりを発揮してくれています。
そしてこの次男を中心に4人の会話も弾み、喧嘩する事も多々ありますがそれでも次男の誕生で笑顔だけは絶えない我が家です。
だって我家の救世主次男はひょうきん者で皆を笑わせてくれるんですから。
奇跡ってやっぱりあるんですね!