持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第5回】
~ 赤ちゃんと笑顔 ~

優秀賞

いつも笑顔がありました

【看護師助産師部門】117票 飛弾野 幸子 北海道  主婦  30歳

「にっこり」これが、我が家の長男の朝の「おはよう」の挨拶です。彼を妊娠してから出産するまで、そして産まれてからも彼の周囲をさまざまな笑顔が取り巻いています。
彼がお腹にいることがわかった時、夫と私はまだ入籍して1ヶ月で、しかも200km離れた所に別々に住んでいました。戸惑う私達をよそに、実家の母は報告したとたん大爆笑。嬉しいやら驚いたやらで笑いが止まらなくなってしまったそうです。
妊娠中は、私は自宅で出産する事に決め、妊婦健診は自宅まで助産師さんに来てもらう事になりました。ところがお互い助産師同士、健診やアロママッサージを終えると、その後はお茶を飲みながらよもやま話に花が咲きます。いつも、「あら私何しに来たんだったかしら」なんて言って帰っていく助産師さん、いつも優しい笑顔でした。そして不思議なパワーに満ちあふれていて、「この人にお産を手伝ってもらえるなんて嬉しい!楽しみだな」と私も笑顔。妊婦健診が本当に楽しい時間でした。
さて、予定日ちょうどの11月16日、陣痛が強くなってきて助産師さんを呼びました。お産が進み子宮口は全開したのですが、陣痛が弱く、またうまくいきむことができません。「産まれないんじゃないか」そんな不安が頭をよぎります。自分が助産師として働いた経験がかえって邪魔をします。不安に思えば思うほど陣痛は遠のいていきました。しかし助産師さんは様々な体位をとるようアドバイスしてくれ、結局自分で自分の足を持ち、仰向けになる姿勢でうまくいきみがかかりました。それからはもう夢中、痛みなんて忘れてしまっています。というか分娩まではまだまだかかると思っていたら「はい産まれるよ」「おぎゃー!」です。「え?もうでたの?」というのが正直な感想でした。もっともっと苦しいと思っていたのに、予想よりもつらくありませんでした。産まれるまで16時間、過ぎてしまえばあっと言う間でした。彼は3300g、全身きれいなピンク色。ひとしきり元気なうぶ声を挙げた後は、すぐに私の乳首を強い力で吸いはじめました。立ち会った夫、母、妹も皆泣き笑いの笑顔です。暖かい幸せな空気があたりを包み、みんなにこにこしっぱなしでした。
そして私は彼にとってベストな出産をプレゼントできた、という満足感でいっぱいです。出産時には心音が下がることもなく、気道を吸引されることもなく、臍帯もしっかり拍動が止まってから夫に切ってもらえ、初回授乳も彼が乳首を離すまで十分に行え、それからひとときも私と離れることがありません。沐浴も助産師さんの魔法のようなテクニックで全く泣かずに終了、今まで私が病院で行ってきた事はどうだったのか振り返るよい機会になりました。もし彼に産まれたときから笑顔をつくる能力があったら、間違いなくずっとにこにこしていたでしょう。もちろん、病院での出産を否定している訳ではありません。ただ、出産は自然の営みであり、女性の「産む力」、赤ちゃんの「生きる力」をもう少し信じてみてもよいのでは、と感じました。
彼は3ヶ月過ぎに声を出して笑うようになり、そうなると夫も私も彼を笑わせようと必死です。また、彼がただそこにいるだけで周囲の人が笑顔になります。気難しい義父も、彼の前ではにこにこです。赤ちゃんの持つ人を幸せにする能力ってすごいなあ、と思わせられる毎日です。
これからも、彼がずっと笑顔でいられるように祈ります。そして私も今回の経験を活かし、いつかまた妊娠・出産に関わることができれば、お母さん・赤ちゃんが笑顔でいられるような助産師でありたいと思っています。
隆一、産まれてくれて本当にありがとう。

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