【第4回】
~ はじめての沐浴 ~
入選
ありがとう
【一般部門】 大阪府 主婦 36歳
息子は総合病院で出産したので、最初のうちは、助産師さんが沐浴させてくれていました。
退院間近になり、自分で入れられるように…と、まず人形で練習し、翌日、息子を病院のお風呂で沐浴させる事になりました。
はじめての事で、ドキドキ…、息子の服を脱がせ、ガーゼをおなかにかけ、抱っこしてみる、心なしか人形よりも重い感じ…。
病院のお風呂は、流しの特大版という感じで、中腰で沐浴させねばならず、だんだん腰が痛くなってくる。
それでも、息子を離すわけにはいかないので、必死で片手で抱き、もう片方の手で洗ってあげる。
お風呂に入れて、はじめて気付いた事「この子、背中にいっぱい毛が生えていてお猿さんみたいだなぁ…」。
腰痛をこらえながら、「泣かれませんように…」と心の中で念じていた。
無事、泣かれずに済んで、ホッとしたもののクタクタだった。
助産師さんは、毎日、2人で10人~30人の赤ちゃんをお風呂に入れている、というから尊敬してしまう。
私の手つきが危なっかしいと思われたのか、「退院する日に、もう一度やってみましょう」と声をかけられ、ゲンナリとしてしまうが、いや、いけない、これから毎日やらなくてはいけない事なのだから…と思い直す。
退院して、家に帰ると、遠くに住む兄が来てくれていた。
私は里帰り出産だったのだが、父が緊急入院してしまい、忙しい母を心配してやってきてくれたのだった。
兄には、私の身の回りの買物から、息子のミルクまでとてもお世話になった。
翌日、とうとう、自分で沐浴させなければ…と思っていると、兄がビニールシートを買ってきてくれ、お風呂の支度をはじめてくれた。
「どうもありがとう」
私は、てっきり、兄が、息子をお風呂に入れてくれるのか、と思っていた。
全ての用意が終ると「さぁ、どうぞ、僕はサポートするから」と言われ、びっくり…。
私は、出産時、痔になってしまい、まだ、つらいのだけど、いくら兄でも、それは言えない…。
覚悟を決めて、息子を風呂に入れてフゥフゥ言いながらやっと終る。
兄のサポートは「うまいうまい、さすがだなぁ」とほめちぎるのみ…、愛のムチなのか…。
そして、兄は、「じゃぁ、帰るから」と、遠い地へ帰っていった。
「お兄ちゃん、ありがとう」
あの時、たくさん感謝しているのに、それしか言えなかった。
今、自然と、息子に兄弟を作りたいと思うのも、お兄ちゃんにお世話になって、こういう風に兄弟助け合っていって欲しいと思えるからだと思う。
改めて「お兄ちゃん、ありがとう」