持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第3回】
~ 赤ちゃんのいる風景 ~

入選

Thank you赤ちゃん

【看護師助産師部門】 女性  28歳

環境や文化が違っていても、言葉や皮膚の色が違っていても地球に誕生した一つ一つの大切な生命の輝きを世界中のみんなで「Happy Birthday!」と心からの「Thank you!」で迎えてあげよう。
7年前、看護学生として臨床実習の真っ最中だった。緊張と期待で胸をいっぱいにして、産科病棟で生まれて初めて経験した人間の生命の誕生に立ち会ったあの日のことは、決して忘れることができない感動の瞬間だった。その日も、なれない手つきでの沐浴や褥婦さんの乳房マッサージなどの看護援助をさせていただきながら、出産の立会いのチャンスを待っていた。実際、夜中や朝方の出産が多いため、私達看護学生にとっての立ち会うことのできるチャンスは少ない。一日の実習を終えようとしていたその時、緊急来院で、陣痛に耐えながらの妊婦さんが運ばれて来た。
「すぐに分娩室へっ!」
外国人の妊婦さんだった。母子手帳も持参せず、名前も住所も国籍も不明。助産師も医師もびっくりしている様子だった。
「Help me! Please!」「No!No!」
「はい、大丈夫ですよ。安心してね。赤ちゃんも元気、がんばるよ!」
スタッフの方々が、日本語と簡単な英語での励ましと指示を送りつづけた。その時、そばにいた私の手をものすごい力で握ってきた。とても苦しそうで、「痛い!痛い!」と、叫んでいるのが理解でき、私は日本語での励ましを繰り返した。
「がんばって下さい!がんばって下さい!」
その言葉しか見つからなかった。何度も何度も励ましを繰り返し、きつく握られた手を握り返した。涙が止まらなかった。
「オギャー!」
大きな泣き声が、分娩室中に響き渡った。それと同時に握られた手の力が抜けて行くのを感じた。生まれたての赤ちゃんに出会えた瞬間、涙が溢れて止まらなかった。人間の生命の神秘に感動せずにはいられなかった。皮膚の色は少しこげ茶色で、カーリーヘアーの可愛らしい元気な男の子だった。本当にかわいい。
「Thank you very much!」
笑顔で彼女は、私の手を握ってお礼を言ってくれた。その手は、とても優しくて温かくて柔らかかった。私も何度も感謝の気持ちを伝えた。生命がこの世界に誕生してくる瞬間が、こんなにんも温かくてみんなの心をHappyにしてくれることに感動を覚えた経験だった。
今でも世界中のどこかで、大切な生命の産声が聞こえているのだろう。世界中のみんなで、その一つ一つの輝きの誕生を祝福していきたい。
「初めての立会い看護が外国の方で、難しかったのに良く頑張ったね!」
「私達看護者は、言葉だけで看護するだけではなくて、まずは心と心の通じ合いが一番大切。特に出産は、国籍なんてものは関係ないね。」
素晴らしい看護実習体験として、私の産科病棟での実習は終了した。
あの時の男の子は、今ごろ地球のどこかで夢と輝きにに溢れた未来を生きているのだろうか。いつか、どこかで会えるかな。

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