持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第3回】
~ 赤ちゃんのいる風景 ~

大賞

パパの妊娠

【一般部門】426票 大浦 鉄平 福井県  会社員  29歳

「おめでとうございます。女の子ですよ。」
僕は、帝王切開で手術台にいる妻より先に我が子を抱くことになった。僕の手の中で、小さな小さな命が元気よく産声をあげている。生まれたての赤ん坊って、なんてあたたかくて柔らかいのだろう。これからも、この子と妻をずっと大事にしていかなければ、僕はそう心に誓った。
妻は、僕よりも2つ年上。だけど、すごく頼りなくて危なっかしい。妊娠が分かったときは、2人で飛び上がって喜んだのだが、はじめての妊娠にとまどいも覚えた。ことあるごとに大騒ぎする妻に、僕はいつも以上に気を張らなければならなかったからだ。はっきり言って僕だって妊娠したことがないから何も分からない。しかし、せめて妻の心の支えにならなければ、僕は育児書を買ってきて勉強した。
妊娠初期、妻はひどいつわりにおそわれていた。ご飯を作るのもダメ、見るのもイヤ。妊婦なのに少しやつれた妻を見ると、なんだかカワイソウで、僕まで胃が痛くなった。しばらくコンビニ弁当が続いたのだが、夏場だったせいか、僕までつわりのようなものにおそわれた。
「つわりって、うつるらしいよ。」
さすがにこのときばかりは介抱してくれた妻が、嬉しそうにそう言っていた。妻は毎日この気持ち悪さに耐えているのだ。僕が協力してあげなければ・・・でも、やっぱり気持ちが悪い・・・
妊娠6ヶ月に入り、ようやく妻のつわりが治まった。お腹の中の胎児は、つわりとは関係なく順調に育ち、妻のお腹も目立ってきた。ふと気が付くと、僕のお腹もぽっこり出ていた。不摂生な食生活が続いたせいであろう。こんな状態では産まれてくる赤ん坊に笑われてしまう。気を付けなければならない。
妊娠7ヶ月。検診から帰ってきた妻が浮かない顔をしていた。
「赤ちゃん、逆子になっちゃった。」
逆子?聞けば、この時期逆子になるのは珍しいことではなく、ほとんどの場合、胎児は出産までに元の位置に戻ると言うことだ。産婦人科の先生からは、逆子体操をして下さいと指導されたらしく、その日から、妻は逆子体操である奇妙なポーズをとらなければならなくなった。
「お腹大きいから、けっこうつらいよ。」
僕もチャレンジしてみた。僕もお腹が出ているので、確かにきつかった。どうか、逆子が治りますように・・・
しかし、逆子は臨月になっても治らなかった。きっと僕たちの子はお腹の中で逆さまになっているのが嫌だったのだろう。妻は諦めずに、逆子を治す針治療、整体など何でもチャレンジしたのだが、ついに予定日2週間前を迎えてしまった。僕たちは、悩んだあげく、お腹の子と妻の安全を考えて、帝王切開で出産する事に決めた。
出産当日。僕は、妻に少しでも安心して子供を産んでもらえるよう、出産に立ち会うことにした。手術室にはいると、ピチピチの白衣姿の僕をみて、緊張気味の妻が少し笑っていた。
そして今、やっと我が子を腕に抱くことが出来た。世間では、妊娠・出産は、女性の仕事と位置づけられているのかもしれないが、男性である僕にとっても、大変な仕事であった。つわりまで体験し、お腹も大きくなった僕は、妻と一緒に妊娠していたのも同じだった。その分、感動も大きい。これからは子育てというもっと大変な仕事が待ち受けている。しかし、どんなことがあろうとも妻と二人三脚で乗り越えていきたい。
あれから半年経ち、娘の優依も僕そっくりに可愛くなって、頼りなかった妻も、キビキビとした母親になり、出産前のスレンダーな体型に戻っていた。子育ては大変だが、それ以上にとても楽しい。ただ気になることが一つ。
「優依ちゃんのパパは、いつ赤ちゃんが産まれるの?」
今日も、娘の優依と散歩をしていたら、近所の子供にこう言われた。そう、僕のお腹は、いまだ臨月のままである。

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