持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第14回】
~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

金メダルの出会い

兵庫県  公務員  女性  43歳

帝王切開で出産すると、手術の処置で初乳をあげられないので、赤ちゃんが哺乳瓶に慣れて、母乳を飲まなくなる、そんな話を聞きました。42歳でやっと授かった赤ちゃんです。キュッと抱きしめてあげると、ごくごくっとおっぱいを飲んでくれる、そんな素敵な出会いを望んでいました。でも不安は的中しました。出産翌日に私の所に戻った赤ちゃんは、おっぱいをうまく飲めないのです。徐々に慣れて飲んでくれますよと言っていた助産師さんも、出産4日目ともなると首を傾げました。「頑張れ赤ちゃん。」赤ちゃんは、小さな口で吸おうと頑張りますが、吸えずに離してしまいます。病院中の助産師さんが話を聞きつけ、飲ませようとしてくれましたがだめでした。そうしているうちに、退院の日がきました。
退院後、赤ちゃんは風邪をひいてしまいました。母乳には免疫成分が入っているといいます。赤ちゃんが風邪をひいたのは、母親である私が母乳を飲ませてあげられないからだ、そんな風に自分を責める日が続きました。何とか母乳をあげなくてはと思い、助産施設を訪ねてアドバイスをもらいました。2、3口なら飲めるのですが、続けて飲むことができません。私が悪いんだ、そう思いつめてノイローゼの様になってしまいました。
そんなある日、魔法の手をもったナースがいるという噂を聞きました。そのナースにかかると、赤ちゃんは何でも言うことを聞くらしいのです。何とそのナースは、出産した病院の小児科にいるらしいのです。電話をして事情を伝えると、そのナースである竹内さんから直接電話をくれるとのことでした。待っていると、翌日の朝に電話がありました。夜勤明けに電話をくれたのです。「辛い思いをしているのね。赤ちゃんと週末に病院にいらっしゃい。」竹内さんは、そう言ってくれました。
当日は雪のちらつく寒い日でした。私は、赤ちゃんをおくるみに包み病院へ向かいました。ぐずる赤ちゃんと診察室に入ると、優しいお母さんの様な人がいました。「まぁ、かわいい赤ちゃん、いらっしゃい。」そういって、」赤ちゃんを抱っこしてくれました。すると、ぐずっていた赤ちゃんが嘘のように静かになりました。今までのことを説明すると、「大丈夫、お母さんの気持ちは通じるから。」そういって、私に向けて赤ちゃんを縦抱きにして、おっぱいに向かわせました。すると、おっぱいを飲めなかった赤ちゃんが、おいしそうに飲んでいるではありませんか。涙が溢れてきました。今まで悩んでいたのは何だったのでしょう。「気持ちが通じたんですよ。」竹内さんは言いました。「でも、これから先、この子がおっぱいを飲んでくれなくてもね、気に病むことはないのよ。お母さんにはおっぱいをあげること以外にも、してあげられることがたくさんあるのよ。」そうだ、私は何でおっぱいをあげることばかりにとらわれていたんだろう。他にも、この子にすべきことがある。「ありがとう竹内さん。これからは何があっても頑張ります。」「肩の力を抜いてね。」竹内さんは、笑いながら言いました。
別れ際、お礼にと渡したお菓子に竹内さんは首をふり、「私ね、関わった赤ちゃんの名前、みんな覚えてるの。この間、オリンピックを見てたら、私がお世話した赤ちゃんが出ていたの。向こうは私のことなんて覚えていないけど、私は嬉しかったわ。」竹内さんは子どものように笑いました。「じゃあ、この子がオリンピックでメダルをとったら、メダルをもって竹内さんを訪ねます。」「待っているわ。」私たちは固く握手をしました。
赤ちゃんがおっぱいを飲めたのは、この時だけでした。でも、私は落ち込むことはなくなりました。赤ちゃんとの出会いが、更に素敵な出会いを生んでくれたのです。「赤ちゃん、あなたに出会えたことが私にとっての金メダルなんだ。」この気持ちを胸に、これからも赤ちゃんと一緒にいろんな壁を乗り越えていきたいと思っています。

ページの先頭へ

電話をかけて相談・問い合わせる

お問い合わせ 0120-01-5050
(9:00~17:40 土、日、祝日、会社休日を除く)

PCサイトを表示する