持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第13回】
~ 赤ちゃんとのふれあい ~

入選

空白の二時間と兄弟

東京都  主婦  女性  35歳

『帰ってきたよ~。』そう言って5日間の次男出産のための入院を終えて家に戻ってきた。
主人が仕事だったため姉夫婦に退院の迎えにきてもらっての帰宅だった。
2歳半になる長男は母と姉に面倒を見てもらっていて私とは数日ぶりの対面だった。
私が産まれたばかりの次男を抱いて長男に近づくと長男がスーっと離れて母や姉夫婦の近くに陣取ってこちらには来ようとしない素振りを見せた。私と長男との間によそよそしい雰囲気が漂っているのを感じた。
次男をひとまず布団に寝かせて自分の気持ちを落ち着けた。そしてもう一度長男に近づいたが長男は私を自分の視線に入れないようにして姉達にまとわりついていた。産まれたての次男にも一切近づかず、まるでその空間に私と次男だけがいないかのように振舞い続けた。そんな長男に無理には近づかず内心では戸惑いながらも静観した。母親として初めて疎外感を感じた不思議な時間が流れた。
二時間ほどが過ぎて姉夫婦が帰ると、ふいに長男が私に寄り添ってきてくれた。私が近づけなかったバリアをいとも簡単にやぶり、さっきのよそよそしい表情とは一転していつもの人懐っこいニッコリ顔の長男だった。私は一気に肩の力が抜けて、ふ~~っと安堵の溜息をもらした。気を取り直して『ちゃんとおばあちゃんの言うことを聞いて元気に過ごしてたの?』と優しく問いかけると長男はその問いには答えなかったがハニカミながら次男に近づいていき寝ている次男の顔をのぞきこんで『赤ちゃん寝てた・・・。』とつぶやいた。それからはもう1人増えた新たな家族の形を少しずつ感じながらの時間となった。
私と次男が帰宅してからの空白の二時間を経て長男は何かしらの心の準備をしていたのだろうか。一度私や次男に近づいた後は無邪気な顔で私にも次男にも語りかけて笑ってくれていた。
私は出産前にテレビドラマやニュース、CMに赤ちゃんが出ていると『赤ちゃんかわいいね。』と長男に話しかけ新たに迎える次男を快く受け入れてもらえるようにと考えながら過ごしていた。
帰宅してから次男へミルクを与える際は長男に哺乳瓶を持ってもらったり、オムツを持ってきてもらうお手伝いを頼んだ。予備知識として赤ちゃんのお世話を長男にも手伝わせることによって母親を独り占めできなくなる寂しさを和らげ赤ちゃんへの情も育まれると聞いていた。その教えから次男のお世話には長男を巻き込むようにして常に声をかけて一緒に喜びの輪の中にいられるように心がけた。
1ヶ月~3ヶ月間はただただ寝ている静かな次男へミルクとオムツを持ってきて、たまに顔をのぞき込み様子を見守る長男。
4ヶ月~6ヶ月にかけては少し動き出した次男に多少の嫉妬をしながらも一緒にゴロゴロと畳の上を転がって喜んでいる長男。
7ヶ月~9ヶ月はより動きが活発になった次男に自分のオモチャを触らせないように意地悪をしながら、たまにオーバーリアクションで笑わせてあげたり名前を大きな声で呼んで気を引いたりする長男。
親の目から見ていて小さいながらも少しずつ兄弟の絆を築いているように思えて、二人の触れ合っている姿がとても胸を打つ。キャッキャッと笑う声がする時にはそちらへ振り向いてみると次男が長男に近づいていきとびきりの笑顔を見せていたりする。まだまだ小さな次男にもいつも一緒にいる長男への愛着が芽生えてきているのなら、積み重ねた日常の日々がしっかりとその小さな心に刻まれているのだと実感できた。
親と子の縁はもちろん深く大切だが親が亡き後はきっと兄弟のつながりが支えになりお互いを必要と感じる時期があると思う。まだ始まったばかりの兄弟の縁をこれから一緒に生活していく中でしっかりと結ばれてることを親として願いたい。

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