持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第13回】
~ 赤ちゃんとのふれあい ~

入選

そんな風に愛してくれた人はいない

東京都  主婦  女性  31歳

とにかく、0歳の頃の娘は人見知り・場所見知りが酷かった。
多くの子育ての先輩は、そんな娘を見ると、必ず「社会性がない」と言われた。実家も遠く、娘を生むまで働いていて家と会社の往復だった私は、近くに友達も居らず、家の中で母娘二人きりで過ごして居た。
このままじゃいけない!
いきり立った 私は、市から頂いた子育て案内情報や、インターネットでベビー向けの習い事を探し、せっせと予定を詰め込んだ。
しかし、癖のある娘と用事をこなすのは、とてつも無く難儀な事だと気がついた。
まず行く道中でつまづく。
ベビーカーは乗ってくれない。大泣きし、娘を抱っこし、空のベビーカーを押して行く。一体、この手押し車は何のため…?
自動車はもっと酷い。チャイルドシートを嫌い号泣。
あまりに泣いて冬でもシートは汗だく。運転手の私も気が気じゃなくて、本当に最低限しか使わなくなった。
そんな娘が遊び場に到着しても、号泣し、私の傍から離れない。
結局泣いて終わり、何をするために行ったのか分からない日が数ヶ月も続いた。もちろん、そんな状況では中々友達もできない。
私は焦っていた。
外が怖くて、乗り物が怖くて、遊び場でも泣くのは、私のせいだ。
きっと、自分の内向的な性格が遺伝して、こんな臆病になってしまったんだ…。
外に(人の居る所)に行かないと…、でも行っても泣いて終わるし…。この葛藤に悩みながらもまた月日が過ぎてゆく。
ある時、気がついた。
娘は抱っこされていると、とっても良い子なのだ。
その状況だと、ある程度は外に出ても、人に会っても平気だった。
お腹とお腹がくっついて、小っちゃな手と足はペチペチと私の贅肉を叩く。くっついていれば、暑かろうが、狭かろうが、寝にくいだろうが、そんな最適とは言えない環境条件でも、機嫌が良い。
そうか、一緒がいいんだね。
当たり前の事なのに、その時まで気がつかなかった。
今は外に出るよりも、お母さんと一緒にくっついて居たいんだね。
安心出来る家の中で私だけにくっついて生きて行きたい。
そんな風に愛してくれた人は今までにいなかったから、気がつかなかった。
それから、私は娘との触れ合いを第一に考えた生活を送った。
1歳を過ぎてチャイルドシートを前にしたら泣かなくなった。きっと、見えなかったのが不安だったんだろう。
1歳3ヶ月の時、夫に娘を預け久々に一人で出かけた。
いつもは暑くて重いお腹と腰が、涼しくて軽くて…淋しかった。
もうすぐ2歳になる娘は完全に人見知りが無くなり、遊び場も率先して遊びに行く様になった。
何時間も抱っこされている事は無くなったけれど、それでも、私を見つけると、手を差し伸べて娘は駆けてくる。

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