持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第13回】
~ 赤ちゃんとのふれあい ~

入選

ひいおじいちゃんとのお風呂

神奈川県  主婦  女性  52歳

私の父は今年八十五歳になった。私は長女、弟がいる。私たち姉弟は、二人とも父にお風呂に入れてもらった。父のお風呂は、温泉のように浴槽ぎりぎりまでお湯をわかし、ざぶーんと熱めの湯の中に入る。私はそれをもったいないと常々思うのだが、父はそんなのおかまいなしだ。母も何とも言わない。その熱く深いお風呂に赤ちゃんの時から入れられているのだから、自分でもよく我慢したなと思う。
それよりも前の借家にお風呂がなかった頃は、銭湯に行っていたそうだ。その頃の出来事である。私はやはり男湯に入っていた。母と父は待ち合わせをしてお風呂から上がるのだが、あるとき母が隣のお風呂に入っていると、私の声が聞こえたという。待ち合わせ時刻に出ると、父が
「まいったよ。お風呂に入ったら、下からぽっかりと浮かんでくるものがあった。それがウンチだったんだよ。急いで誰にも見つからないようにタオルで包んで流したんだ」
今でも時々話されるので、私にとっては恥ずかしい笑い話になっている。
今の実家に引っ越してからも、父の後に入るとお湯はなみなみと、かなり熱い。それもそのはず、父は私たちのことを思って親切心で自分が快適だと思うくらいに沸かし直しをしていたのだ。浴槽の中に入るには勇気がいる。片足を入れると、きりりと熱さが痛みのように伝わってくる。百まで数えたら勢いよく飛び出していた。
私に娘が生まれた時、父は当然に自分の仕事として私たちと同じようにお風呂に入れるのを楽しみとした。あんな風に私も入れられていたんだと感慨深い思いだった。娘はおじいちゃんとのお風呂の時が一番好きなようで、笑い声が大きく響いてくる。どうも、娘も手慣れたおじいちゃんのお風呂のとりこになってしまったようだった。
その娘も一年前に母親になった。シングルマザーなので、仕事も育児も家事も手を抜くことはできない。近くに住んでいるとはいえ、私と夫は娘からのSOSが発信されない限り、でしゃばらないことにしている。
そこでまたおじいちゃんが登場。いや、娘の子は私たちの孫だから、ひいおじいちゃんになる。まだ体力は十分にある。思いもかけない嬉しい仕事が舞い込んできた。ひ孫をお風呂に入れる重要な役目だ。
それが驚いたことに、私の赤ちゃんの頃の銭湯での出来事を、今、ひ孫がしているのだ。入ったとたんに浮かんでくるウンチ。それほどお風呂が気持ちいいんだろうな。お湯の温度もぬるくしてある。母との連携プレーでウンチをすくってトイレに流す。ふたりの手際のいいことといったら、私には同じようにすることはできないな、と思う。長年子供をお風呂に入れ続けていたからこそできることであろう。一つだけ我が孫にはかなわないことがある。浮かんでくるウンチは毎回のことなのだ。よくもまあ小さいのにウンチをお風呂まで持ちこたえているものだ。感心する。ようやく歩けるようになって、お風呂から上がる時のひいおじいちゃんからひいおばあちゃんへの手渡しはなくなった。ちょこちょことした足取りで、うっすら桃色になったひ孫が、さっぱりした顔で歩いて出てくるように成長した。ひ孫にとっては、ママを除けば、ひいおじいちゃんが一番好きな人なのだ。
大きくなっても、ひいおじいちゃんにお風呂に入れてもらったことを覚えてくれていたらと願うばかりだ。

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