持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第13回】
~ 赤ちゃんとのふれあい ~

入選

一人時間と二人時間

愛知県  主婦  女性  38歳

思えばわたしの好きなこと、したいことは、一人ですることばかり。ゆっくりと本を読んだり、ネットサーフィンをしたり、テレビを見たり。たまに外に出かけてもやっぱり一人で、カフェに本を持ち込んで読んだり、書店や雑貨屋さんを眺めたり。小さな子どもを連れてはむずかしいことばかりです。そういえば、コンサートや映画にもしばらく出かけていません。
娘が生まれてからは、動物園や遊園地など、人の多いところへ出かける機会が増えました。できたらぐっすり眠ってほしいし、一日中家の中ばかりではなんだかかわいそう。というより、よい母親になるためには毎日どこかにお出かけをさせてやらなければ、という焦りのような感覚もあり、公園に出かけ、暑い日、寒い日や雨の日はショッピングモールの遊び場などへ連れて行きます。親子が集まる地域の交流会にも参加しました。
もともとお出かけをすることも人の輪に加わることも、どちらかといえば得意でないわたしです。ほかのお母さんたちとの接し方に戸惑うこともあります。意味がないとわかっていても、よその子と成長の度合いを比較して、不安になったり、逆に優越感を持ってしまうこともあります。
昼間家にいる間は、娘が起きていると常に遊びの相手をすることになります。読んでほしい絵本を次々に渡され、子ども番組のビデオを見たいとせがまれ、「ごはんをどうぞ」のおままごと攻撃も始まります。あちこちの引き出しを開けては中のものを引っぱり出し、パソコンを使い始めれば、キーボードを叩いて操作を妨害します。そして、片付けるそばから散らかされるおもちゃ。娘がお昼寝をしている間だけの、一人の時間がほしいわたしは、早く眠くなれ、と催眠術でもかけるようなうらみがましいまなざしで娘に思念を送ってみたりしています。
そんなふうに、日々子どものいたずらにイライラしたり、あまり気の進まないお出かけを繰り返したり。子育てを楽しめていない自分が情けなくなってしまうこともあります。
しかし、そんなわたしにとって、夜の眠る前の時間、娘とベッドに入るひとときは、純粋に娘とのふれあいを楽しめる時間になっているのです。
娘が一歳十一か月のときに断乳しました。授乳期間中の寝かしつけは、完全におっぱいに頼っていました。吸わせていればそのうちに眠ってくれたので、お昼寝や夜の就寝時間をある程度調整することができました。夜中に起きて泣き、そのたび授乳が必要、という大変さはありましたけれど。
今は、眠る前にベッドに寝転んで、絵本を何冊か読み聞かせた後、灯りを消します。真っ暗になってしまったら、もう絵本も読めないし、顔も見えません。声と、肌の触れ合う感触でしか、互いを感じることができません。「おかあさん、だっこ」と必ず言う娘。こんなにも純粋に自分を求めてくれることに喜びを感じながら、歌を歌ったり話しかけたり、余計なことを考えずにただ娘と抱き合う時間です。
今日もいっぱい怒ってごめんね。もっと遊んであげられたらよかったね。慌ただしさから昼間娘をかまってやれなかったことを埋め合わせるように、ぎゅうっと抱っこでこたえます。
一日の育児がすべて終わり、ほっとする幸せな瞬間。娘のぬくもりと重みを腕に感じながら、充実感がありすぎていっしょに眠ってしまうのが悩みです。
娘が寝ついてくれたら、今度こそ一人の自由な時間が持てるのですが、いっしょに眠りにつく心地よさには抗えません。一日の終わりが、子育てをしていて一番幸せを感じる時間で締めくくられるのです。明日もがんばる気力を満たしながら、今日も眠りに身を任せてしまうのでした。

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