持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第12回】
~ 赤ちゃんへの手紙 ~

入選

ありがとう、お兄ちゃん。

埼玉県  会社員  女性  26歳

幼い頃、ふと母に抱っこされる弟をみて
「もう私はお母さんに抱っこって言えないんだ。」
そんなふうに思い、唇をかみしめ甘えることを我慢していました。周りからの
「お姉ちゃんなんだから。」
その一言で甘えられなくなっていました。それはそれはツライ“我慢”の日々でした。二才の時の、遠い記憶です。
貴方がお腹にいることが分かった時、私は嬉しくもあり、
「ママになるなんて大丈夫かな」
という不安もあり、正直複雑な気持ちでした。でも日に日に大きくなるお腹の中で元気に動く貴方に、私は毎日救われていました。ノルマの課せられる営業という仕事をしていましたが、貴方がお腹にきた途端、私の成績は鰻のぼり。いつも二人で仕事にいく、そんな気分でした。貴方が私に元気を分けてくれていたのです。
そしてとうとう貴方に会える日がきました。長い陣痛の後、貴方は大きな産声をあげて産まれてきました。初めて貴方を抱いた時、涙がこぼれ、親ばかにも
「かわいい~!」
と口に出ていました。その瞬間、私の不安は全て消えたのです。
「この子を絶対守らなくちゃ」
そんな気持ちでいっぱいでした。そして、
「この子の気持ちを一番に考えよう」
そう心に決めたのでした。それからの貴方との生活は毎日新しい発見でいっぱいでした。愛情と睡眠不足の間でうろうろしながらの、幸せな日々でした。
二年後、貴方の弟が産まれました。新しい家族が増えることは貴方にとって初めての経験。初めて見るほやほやの赤ちゃんに最初は不思議そうな、まるで犬や猫をみるかのような瞳で視線を送っていましたね。貴方だってこんな風な赤ちゃんだったのよ?
いつから貴方はこの赤ちゃんを自分の弟として認識したのでしょう。恥ずかしながら、私は二人の育児と家事、仕事で精一杯で貴方としっかり向き合っていませんでしたね。
ちょっとしたことでガミガミ叱ってしまい、
「ああ私はこの子にとって、怖いお母さんだ。」
と貴方の寝顔を見ながら反省したりもしました。そして気づけば貴方には沢山沢山我慢させてしまっていました。
「お兄ちゃんでしょ!しっかりして!」
そんなふうに貴方に言ってもいました。あんなに自分自身辛かったのに、同じことをしてしまっていたのです。
ごめんね?
まだまだ、赤ちゃん扱いしてほしいときだってあったよね。
「抱っこ!」
そう言って泣き叫ぶ貴方に、どうして弟を少し泣かせてでも抱っこしてあげなかったのでしょう。
弟を突き飛ばした貴方を、どうして頭ごなしにしか怒れなかったのでしょう。原因は私にあったかもしれないのに。
部屋の隅で目に涙を沢山溜めて、泣くのを我慢している貴方をみたとき、私はハッとしました。思わず貴方を抱きしめました。
ごめんね。
頭では分かっているのに、なかなか理想どおりにはできない、その子育ての難しさにぶつかった瞬間でした。
しかし、保育園に初めて兄弟で登園した時の貴方に私はとても驚かされました。物珍しそうに弟に近づいてくるお友達を寄せ付けず、泣きながら必死に守ろうとしていたと。そして抱っこなんてとてもできないのに弟を抱きかかえようとし、二人で家に帰ると主張したと保育士さんに聞き、胸が熱くなりました。いつの間にか、お兄ちゃんになっていたんだね。私は貴方に教えられてばかりです。
先日弟が一才の誕生日を迎え、貴方はお兄ちゃん二年生になりました。その日は弟と一緒にお風呂に入り、ハッピーバースデーの歌を歌ってくれましたね。この一年間での貴方の成長に比べ、私といったら、、と恥ずかしい気持ちです。まだまだ未熟なママです。でも、貴方のことを誰よりも愛し、想っています。私達の息子に産まれてきてくれて、本当にありがとう。そして、お兄ちゃんになってくれてありがとう。
きっと今の貴方の我慢が、将来の貴方を作るでしょう。いつか、
「兄弟っていいものだ」
そう思える時がきてくれるといいな。私自身がそうであったように。

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