【第12回】
~ 赤ちゃんへの手紙 ~
入選
君は虹の子
神奈川県 主婦 女性 36歳
「ママ見て、お空に虹が出てる!
見て見て!二個の虹!」
「ホントだぁ、二重の虹って珍しいね。」
出産してから、虹を見る機会がぐっと増えた気がする。
それまではフルタイムで働いていたから、日中に空を見上げる余裕がなかっただけかもしれないけど。
「キレイ、キレイ!」
とはしゃぐ君の横で、ママは虹を見る度、思い出すコトが一つあります。
それは君を産んで3日目の朝。
少し小さめに産まれた男の子。
ママのお腹には筋腫があって、それにも負けず一生懸命出てきてくれた喜びと安堵感は今でもはっきりと覚えている。
でも、その後に待っていた、ヒドイ体の痛みと育児へのプレッシャー。
抱っこもオッパイを飲ませるのも下手だったママは、吸い付かせるのも四苦八苦、まさに授乳は格闘だった。
夜通し格闘し、やっとの思いで自分の朝食を口にした瞬間、またしても、
「オギャー!」
という盛大な泣き声。
思わず出た大きな溜息。
「わたしには育児なんて無理かししれない。」
疲れからか、涙がポロポロこぼれ出てしまった。
その後沐浴のため看護師さんに君を渡すと、どこかホッとした気持ちになったのを覚えている。
でもすぐにそれを後悔した。
沐浴に行ったまま、君が帰ってこない。
「どうしたんだろう。」
そう思った時、内線が鳴った。
君は強い黄疸が出てしまい、光療法を受けることになった。
先生は優しく説明してくれたが、もし光を当てても黄疸数値が下がらなかった場合、何らかの異常があるかもしれないという言葉が頭をグルグル駆け巡った。
わたしのせいだ。
とてつもない罪悪感と赤ちゃんがいない淋しさで、カーテンも締め切り、半日近くずっと涙が止まらなかった。
「オッパイ張らない?マッサージしようか?」
看護師さんに言われ、ずっと付き添ってくれた主人は席を外した。
「この仕事してると育児のプロみたいに思われがちだけど、自分の子育ては全然違って何回も泣いたわよ。」
頼もしい笑顔でそういうと、
「そういう時は人に頼っていいから。今赤ちゃんはママと一緒に退院するために一生懸命頑張ってるよ。赤ちゃんの力を信じて!」
胸の痛みとココロの痛みが一気にほぐれた。
看護婦さんが部屋を出るとパパからの電話。
「窓開けて見て。虹が出てるよ。
きっと赤ちゃんは大丈夫!」
そうだ、私だけじゃない。
パパの力も周りの人の力も借りて、そして君の力を信じよう。
無事に成長し、すっかりお喋りが上手になった君に伝えたい。
「君は強い虹の子」だよって。