持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第12回】
~ 赤ちゃんへの手紙 ~

優秀賞

小さな先生

111票 河岸 絢子 千葉県  主婦  31歳

パパにも話していないことだけど、ママは一人でいるとき、二人のことを「先生」って呼んでいるんだ。
なぜなら、二人は、この7ヶ月の間に、たくさんのことを教えてくれたから。
最初は、まつ毛君(ママの担当医)に、
「こっちの子は、パッシングベビーになるかもしれないなぁ……」と言われたとき。
「双子の場合、どちらか一方が淘汰されるのは、よくあること。けして、お母さんのせいではない」
と言われても、可愛らしい二つの胎嚢を前に、今更なかったことになどできるはずもなく……。
同じような事例を探しては、不安な気持ちを募らせていたっけ。
手を貸してあげたくても、ママにできることは何もなく、二人の様子を伺いたくても、お腹の皮と脂肪が邪魔をして、覗くこともできない……。
ママにとって、それがどれほどもどかしく、苛立たしかったことか。
今思うと、「超」がつくほど心配性なママに、二人は教えてくれていたのかもしれないね。
二人のためにと、あくせく動き回ることよりも、「信じて見守ること」が、何より大切だということを。
お陰で、ママは少しだけ強くなれた気がするよ。
悪阻はお互い大変だったね。
二人は、メロンやハーゲンダッツといったやや値の張るものしか受け付けてくれなくて、ママは1ヶ月で7kgも痩せてしまったんだ。
本当は、咲き誇る桜や芽吹いたばかりの緑を見せてあげたかったのに、トイレとベッドを往復するのに精一杯で、外の空気に触れることすらできなかったね。
いつ終わるかしれない悪阻に、涙した日もあったけど、そんな時間があったからこそ、好きなときに、好きな人と、好きな場所で、好きなものを食べれることが、どれほど有り難いことかを知れたんだ。
これも、二人がいなければ気付かなかったこと。
当たり前すぎて忘れていた、大切なことを教えてくれて、ありがとう。
悪阻が落ち着いてからは、「ありのままの自分を受け入れること」を教えてくれたね。
お腹にフヨフヨの毛が生えたり、お気に入りのデニムが穿けなくなったり、夜中に何度もトイレに行ったり。
このままカラダが野生化してしまうのではないか?!と、毎日が驚きの連続だったけど、
「お腹を包む毛は、二人を外部の衝撃から守るためのもの」、「大きなお腹は、二人が元気に育っている証拠」、「夜中の頻尿は、産後にミルクを上げるための予行練習」だと知ったとき、どんな現象にも意味があったんだと納得し、ありのままの自分を受け入れられるようになったんだ。
それにね、二人の存在感が増すにつれ、これまで見えなかったものが、見えるようになったんだよ。
例えば、毎日の天候や気候の変化、雲の流れや道端に咲く花の様子など。
日に日に大きくなる二人のように、世界は、たくさんの小さな変化で成り立っているんだと知ったとき、些細なことにも感動できるようになったんだ。
これも、二人がいなければ気付かなかったこと。
毎日、たくさんの感動を、ありがとう。
だからね、二人が生まれたら、今度はパパとママが、たくさんのことを教えてあげたいと思っているんだ。
春には、満開の桜を見に行こう。
パパには、気が早いと笑われたけど、4人で囲めるように大きな重箱を買ったんだ。
パパは食いしん坊だから、おかずをたくさん詰め込まなきゃね。
夏には、大きな海を見せてあげる。
ママはカナヅチだから、パパのように水をかく楽しさや気持ち良さは教えてあげられないけど、綺麗な貝殻の探し方や丈夫なお城の作り方を教えてあげるよ。
そうそう、粉雪が降る頃、パパは二人に、
「サンタクロースなんていないよ」
と意地悪をいうと思うけど、ママがこっそり呼んでおくから、安心してね。
大きなもみの木にたくさんの飾りを付けて、毎年、盛大にお祝いしようね。
こんな風に、先々のことを考えて、ワクワクできるのも二人のおかげ。
だから、最初に伝えたいな。
「生まれてきてくれて、ありがとう。たくさんのことを教えてくれて、ありがとう」と。

ページの先頭へ

電話をかけて相談・問い合わせる

お問い合わせ 0120-01-5050
(9:00~17:40 土、日、祝日、会社休日を除く)

PCサイトを表示する