持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第11回】
~ 赤ちゃんがくれるチカラ ~

入選

ひかるのちから

神奈川県  主婦  女性  29歳

私と主人はちょうどふたまわり、24歳離れている。主人には私と同じ年頃の娘がふたりと孫がいる。今でこそ年の差婚は珍しくなくなった。しかし、遠く離れた実家の母に、当時つきあっていた主人のことを話した時は大変だった。
「あなたはだまされているの。お願いだから仕事やめて帰って来なさい。」と毎晩電話で諭された。
それでも主人と結婚すると決めて、ふたりで私の両親に挨拶に行った。その後母からはメールも電話もなくなった。
主人と籍を入れた日の正月、実家に新年の挨拶に行きたい、とメールをしたら「ご遠慮ください」と母から返事がきた。
「勘当」とか「絶縁」という言葉が頭をよぎった。
結婚して一年、妊娠していることがわかった。
昔は意地を張って、男なんか興味ない、結婚なんてしない、こどもなんていらない、と言っていた。
しかし超音波で見えるちっちゃな輪っかみたいな形をしたわが子を見て、涙が止まらなかった。ただただ嬉しかった。看護師さんに呼ばれて後から診察室に入ってきた主人も泣いていた。
ふたりでしばらく泣いた。
産院を出た後、少し考えたけれど、母に電話した。一番に母に知らせたかった。でも何と言われるか怖かった。
赤ちゃんができたこと、出産予定日が私たちの結婚記念日であることを伝えると、「そうか・・・、おめでとう。体は大丈夫?」と今まで聞いたことのないような穏やかな返事が返ってきた。
また涙が出た。
それから八ヶ月後、仕事をやめて出産のため里帰りした。母が地元で評判のいい産院を探してくれていた。「何も手助けできないけど帰っておいで。」
このときはじめて、私たちの結婚は認めてもらえたのかな?と思った。
実家に戻って約1ヶ月後の6月3日、陣痛が始まり、夜の7時に母に送られ産院に向かった。産まれるまではまだ時間がかかりそうだが、そのまま入院することになった。
母は次の日の朝に主人が病院に到着するまで、私の手を握って陣痛につきあってくれた。
立ち会いはパパに、と主人にバトンタッチして5時間後に元気な男の子が生まれた。予定日より8日早く息子は私のところにきてくれた。
どうやら男の子のようだ、というのは妊婦検診でわかっていた。いくつか名前を考えていたが、どれもあまりしっくりこなかった。名前図鑑を読んだり姓名判断をしたりしてずいぶん悩んだ。そんな私たちを見て母が、「パパの名前が光則なんだから、一字もらって、ひかる、というのはどう?」
そして息子の名前は「ひかる」に決まった。
ひかるは先月一歳になった。ますます父親そっくりの顔立ちになってきたが、私の母はあきれるほどかわいがっている。
こどもは親を選んでくるという。ひかるは空の上から私を見つけ、助けにきてくれたのだ。
「まったく、頼りないお母さんだなあ。」
ひかるは私を母にしてくれた。そして、私のことをもう一度母のもとに戻してくれた。娘にしてくれた。
ひかるが歩けるようになったらお父さんとお母さんは結婚式するんだ。おばあちゃんもきっと喜んできてくれる。
ありがとう、ひかる。

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