持田ヘルスケア株式会社

スキナベーブ エッセイコンテスト

【第11回】
~ 赤ちゃんがくれるチカラ ~

入選

助産院でつるりんぽん

高知県  公務員  女性  31歳

助産院で自然に産みたい…。
初めての子どもである長男を妊娠する前から、助産院での自然なお産に憧れていた。けれど、長男の妊娠中には勇気が出なくて、助産院を訪問出来なかった。そして迎えたお産は私が望んでいたような安産ではなく、微弱陣痛二十時間、吸引分娩、出血多量、そして痔のおまけ付き…だった。
私は自分の力だけで産めるような体ではないのかもしれない…と落ち込んだが、二人目の妊娠が分かった時、話だけでも聞きに行ってみようとある助産院を訪ねた。
そこの助産師さんは、安産出来る体は生まれつきなのではなく、自分が努力することで出来ると教えてくれた。運動に食事、そしてお灸…。そうやって自然に産める体を作れば、分娩台に乗らないお産が出来るのだと。助産師さんの話を聞いて、ムクムクと熱い思いが湧いて来た。自然に産める体になるために、自分が出来ることはやりたい!そして、助産院で分娩台に乗らずに自分らしいお産がしたい!
けれど、助産師さんはこうも言った。「助産院で産みたい」と思って頑張っていても、三、四割の人は病院で産まざるを得なくなる。運みたいなものもあるよ、と。
それから出産を迎えるまでの数ヶ月は自分の体と赤ちゃんに向き合っていく日々だった。誰かに産ませてもらうのではなく、自分と赤ちゃんの力で出産を迎えるんだ、と強く思っていた。
そして、出産の日。
ずっとイメージしていた通り、夫と長男に励まされ、支えてもらいながら、私はその時を迎えた。強い陣痛の波に身を任せていると、赤ちゃんが降りてくる感覚がよく分かった。最後は座ったままの姿勢で赤ちゃんは、スルリと現れた。私に傷一つ付けることなく。
「うまれたあ…!」
きれいなピンク色の赤ちゃんだった。
ちらっと確認すると、男の子。穏やかな顔をしている。
妊娠中、私はずっとお腹に語りかけていた。
「つるりんぽんって産まれて来ようね!」
彼はちゃんと私が言っていたことを聞いていたんだ、そうとしか思えない、
理想通りのお産だった。
助産院での穏やかな産後の日々、私はスヤスヤと眠る次男を抱きながら涙がポロポロとあふれたことがあった。
悲しかったわけではない。
夫と長男に見守られながらの素晴らしいお産を振り返っていると、とても嬉しくて、幸せすぎて、自然と涙が出たのだ。
私にも、自然に産める力があった。そのことが誇らしかった。女性に生まれて良かったと心から思った。
長男は産まれたとき、青黒い赤ちゃんだった。産まれるのに時間がかかったので少しチアノーゼを起こしていたのだ。その時は無事に産まれて良かったと思ったけれど、あとになってストレスなく産まれた赤ちゃんはきれいなピンク色をしていてあまり泣かないということを知り、悲しくなった。長男に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
ピンク色の赤ちゃんを産みたい。
今度こそ、自然なお産をするんだ。
そう思いながら過ごした妊娠期間を経て迎えた出産。色々な人が私を支えてくれた。
一緒に妊娠中の体作りに協力してくれた夫。たくさん本も読んで、夫婦で自然なお産のことをいっぱい話した。
いつも笑顔で私に力を与えてくれた長男。もう一人、こんなにかわいい子を産むためにがんばろうと思った。
それから、私を叱咤激励してくれた助産師さん。厳しくも温かい言葉をたくさんかけてくれた。
そして、私と同じくらいに頑張ったのは、産まれて来た次男だろう。
自然なお産をするという母の夢を、これ以上にない形で叶えてくれた。本当にありがとう。
出産はゴールではなくスタートだ。二人の息子は私の大切な宝物。思った通りでなかった長男の出産も大事な思い出だ。けれど、次男の出産を通して私はこれから子育てを頑張っていくためのパワーをもらったように思う。
ピンク色をしたきれいな赤ちゃんの姿を、私はずっと忘れない。

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