【第10回】
~ 赤ちゃんとの記念日 ~
入選
家族で祝福、三男が誕生!
埼玉県 会社員 47歳
「夏休みの思い出で一番うれしかったことは、弟が生まれたことです。8月3日に生まれました。さい玉県で生まれました。赤ちゃんは「オギャー」と泣いていました。お母さんは生まれるとき、「いたいいたい」と言っていました。お父さんは「よくがんばったな」と言いました。名前は風河です。風河が生まれてよかったです。」
――小3になった長男が、「夏休みの楽しかった思い出」というテーマの作文に、先日このような文章を書きました。長男にとって、夏休みの一番の思い出は、二人目の弟が生まれたことでした。5歳の次男にも聞いてみましたが、一番うれしかったのはやはり「ふうちゃんが生まれたこと!」だそうです。
胎動が活発になった3か月ほど前のこと。おなかの子が男の子であることがわかりました。ママが「ねえねえ、ママのおなか触ってみな」と息子たちを誘っておなかに手を当てさせると、息子たちは恐る恐るそっと手を置いていましたが、激しい胎動を感じると、「わっ!!」とすぐに手を引っ込めてしまいました。ママが「赤ちゃんが蹴ったの、わかった?」と聞くと、うれしそうに首を大げさに縦に振り、ニコニコしながら「わかった!!」と答えていました。以来、息子たちは、ママのおなかに手を当てることが増え、赤ちゃんの誕生の日を待ちわびていたのです。
夫である私も、妻のおなかに手を当てては、おなかの子の蹴りの強さを感じ、元気な男の子の誕生する日、誕生する瞬間を心待ちにしていました。私は結婚当初から、わが子の誕生の瞬間に立ち会いたいと妻に伝えていましたが、長男のときも次男のときも、仕事の都合や病気などで、間が悪く立ち会うことがかないませんでしたので、今回こそは立ち会いたいという気持ちは日に日に増してきました。今回立ち会えれば「三度目の正直」であり、立ち会えなければ「二度あることは三度ある」になります。
8月2日。私が会社で残業をしていると、妻から、陣痛が始まったようだというメールが携帯電話に届きました。上司や同僚に事情を話して協力を仰いだ結果、翌日の会議やお客さま対応の代替策を一緒に検討したりするなど、スムーズに仕事を引継ぐことができ、その日帰宅後に、妻を産婦人科へ無事入院させることができました。
翌日になって妻の陣痛が促進し、いよいよ三男の誕生の瞬間に立ち会うことができたのです。妻は苦しがっていましたが、妻のおなかからまずはちっちゃい頭がこの世の空間に登場し、続いて腕が登場しました。そして一気に足まで登場したかと思うとへその緒が切断され、分娩室内に、わが子の大きな泣き声が響きわたりました。「おめでとうございます。男の子です」と助産師さん。
私は「がんばった、がんばった」と妻をねぎらったものの、感動のあまりその後の言葉を失ってしまいました。目から涙がどんどんこみ上げてきて、もう言葉が出ません。まったく出ません。
病院のルールで、立ち会いできるのは一人だけだったため、息子たちは出産の場に立ち会うことはできませんでした。でも、生まれて間もない弟を見て、添い寝して、恐る恐る抱っこしてみて、自分たちに弟ができたことを実感したようです。長男はこのことと、出産前後のできごとなどが脳裏に焼きつき、冒頭の作文に表現したのではないでしょうか。
8月3日――。それはわが家に第三子が誕生し、家族全員で、今までに対してさらに輪をかけた幸せを共有した日です。