【第10回】
~ 赤ちゃんとの記念日 ~
佳作
ぽっかぽか
71票 山本 志乃 埼玉県 公務員 30歳
2010年4月13日待ちに待った赤ちゃんと初めての対面をしました。
2686グラムの片手で持ててしまうくらい軽い赤ちゃん。一生けんめい息をしている。
こんなに小さいんだなと抱いてびっくりしたのが昨日のことのようです。
私は出産前の2月まで小学校で教師をしていました。その時受け持っていたのは1年生。
とっても可愛く、元気いっぱい、好奇心いっぱいの子どもたちです。
ちょうど夏休み中に私のお腹の中に赤ちゃんがいることがわかりました。
とっても嬉しかったけど、夏休み明けからどうしよう・・・という不安で胸がいっぱいでした。
夏休み明けには運動会もあるし、遠足もある。きちんと働くことができるだろうか。
まずは、夏休み明けの懇談会。お家の方々に妊娠のことを伝えなければいけませんでした。
どんなふうに思われるだろう、と口を開くのにはすごく勇気がいりました。でも、きちんと話をするしかない。
重い口を開きました。
「赤ちゃんがお腹の中にできまして・・・。」と思い切って話をした瞬間、お家の方々がワーッと大きな拍手をしてくれました。
「先生、おめでとう!!」って。
懇談会後には、「先生、どこの産婦人科で産むの?お勧めはね○○よ。」とか「葉酸とってくださいね。」とかたくさんの温かい言葉をかけてもらって、胸がいっぱいになりました。
次の日、お家に帰って私の妊娠を聞きつけた子どもたちが祝福してくれました。「先生のお腹に赤ちゃんがいるんだってね。」「触ってもいい?」「疲れたら駄目だから、座って座って。お手伝いしてあげるね。」「名前は何にするの?」「男の子?女の子?」「お腹の赤ちゃんが怪我をしたらいけないね。お大事にね。」
6歳の子どもたちでもこんなに思いやりをもった行動がとれるんだ、と感心させられっぱなしでした。
休み時間には子どもたちと思いっきり体を動かして遊んであげられないし、体育も走り回ることができませんでした。
「ごめんね」という気持ちでいっぱいだったけど、その分、私のお腹の子どもの成長を目の前の子どもたちに伝えていこうと思っていました。
戌の日のこと、腹帯のこと、超音波写真のこと、お腹を蹴るようになったこと、自分が感じていることは教室で話すようにしました。子どもたちはいつも目を輝かせて聞いてくれていました。きっと、自分が赤ちゃんだった時のことを重ね合わせて聞いてくれていたんじゃないかな。下校の時には、毎日私のお腹を撫でて「元気に生まれてくるんだよ。」と話しかけてくれていました。
お父さん、お母さんだけじゃなく、両手じゃ数え切れないほどたくさんの人に待ち望んでもらって生まれてきたあなた。お母さんが受け持ったクラスの子どもたちのように、優しく思いやりをもった温かい人に成長していってほしいな。
そして、私はまたいつか教職に復帰した時、妊娠中にもらったたくさんの「ありがとう」の気持ちをかえしていきたい。今度はママ先生としてね。