助産師に聞く 妊娠後期のQ&A
妊娠後期の悩み・不安
出産を間近に控えた妊娠後期は、からだだけでなく、心も不安定になりがちです。
ひとりで抱え込まずに、助産師さんに相談をして残り少ない貴重な妊娠期間を存分に楽しみましょう。
お産の始まりがわかるのか、落ち着いて対応できるのか心配です。出産に向けて必要な心構えを教えてください。
陣痛や破水がちゃんとわかるのでしょうか?
陣痛や破水があったら、何をすればよいですか。
実際お産が始まると覚えていたことも忘れてパニックになってしまいそうで心配です。
呼吸法はしたほうがいいの?
「陣痛が怖いな。乗り切れるかな?」「出先や一人でいるときにお産が始まったらどうしよう…。」などと、赤ちゃんに会えるのが楽しみな反面、不安に思うこともたくさん出てくる時期ではないでしょうか。具体的な不安だったり、漠然とした不安だったり、様々な思いがあるかと思います。
不安に思っていることをひとつずつ整理してお友達やご家族、助産師などに相談してみましょう。少し気持ちが楽になるかもしれません。
お産の始まりには必ずサインがあります。「おしるし」「陣痛」「破水」の3つです。どのサインから始まるかは、その時になってみなければわかりません。中でも破水と陣痛のスタートはお産のスタートラインを切った状態です。しかし、破水や陣痛が始まったからと言って、赤ちゃんは突然生まれてくるわけではありませんので焦る必要はありません。適切な対処方法を知っておきましょう。
おしるし
おしるしは、赤ちゃんを包んでいる卵膜が剥がれるために起こるもので、粘り気のある少量の出血というのが特徴です。子宮口の準備が少しずつ始まっているサインです。おしるしがあってから出産までの期間はそれぞれです。すぐに陣痛が来る人もいれば、1週間以上来ない人もいます。そもそもおしるしがない人もいるくらい個人差があります。
おしるしがあった場合、即病院に連絡をして受診しなければいけないものではありません。お産の準備期間が始まったと思い、お産の流れを復習することや荷物の準備、部屋の片づけなどの準備を始めましょう。そして、今まで通りの普段の生活を送って心配いりません。
陣痛
「陣痛かどうかわからないのですが…」と相談を受けることがあります。「これは陣痛かな?」と迷う時は、少し様子を見てみましょう。本物の陣痛は、明らかに今までの陣痛とは違い時間が経つにつれて痛い時間は長く、間隔は短くなり、痛みの程度は強くなってくるので、気がつかないことはないでしょう。
一般的には、初産婦さんは10分毎、経産婦さんは15分毎の遠のくことのない規則的な張りや痛みを感じたらその時点で一度病院へ連絡をして病院へ向かうタイミングを相談しましょう。
妊娠経過中に、子宮口が開きやすくなっている頸管無力症や切迫早産の既往がある場合は、急速にお産が進行することがあります。特に、経産婦さんは、前回のお産の所要時間が短かったり、赤ちゃんの推定体重が上の子の生まれたときの体重に比べて小さめであったり、すでに子宮口が少し開いている場合、お産があっという間に進行することが多いのです。
このように妊娠経過や前回の分娩経過によって早めに病院に行ったほうがよい場合もあるので、健診の時にどのタイミングで病院に連絡したらよいか確認をしておきましょう。「まだお産になるには時間がかかりそう。」と判断した場合、「お家でもう少し様子をみましょう。」と自宅待機になることもあります。「病院に来てください。」と言われるまでの間は、できるだけリラックスして過ごしましょう。
破水
破水には卵膜が破ける位置によって、完全破水と高位破水の2種類があります。
完全破水の場合は子宮口に近い位置が破けるため明らかに羊水がジャブジャブ出てくるので破水したことに気が付くことができますが、高位破水の場合は、子宮口から遠い位置が破け、小さな穴から羊水が漏れ出てくる程度なので、破水したことに気が付かなかったり、判断に迷ってしまうことがあります。数時間後に、「やっぱり出ている気がする…」「尿漏れかと思っていたけど、あれは破水だったかも…」ということで病院に来てみたら「破水だった!」という方も少なくありません。
判断に迷うときは「破水の可能性」というのを一番に考え、「破水したと思われる時間」「羊水の色」また、「羊水以外の物が膣から出ていないか」の3点を確認し、すぐに病院へ連絡をしましょう。破水した場合は、破水の程度に関わらず入院することになります。
破水後は、細菌が子宮の中に入ってしまう可能性が高くなり、赤ちゃんやお母さんが細菌感染を起こしてしまったり、それに伴って赤ちゃんの具合が悪くなってしまうことがあります。ですから、入院をして感染徴候やモニターで赤ちゃんの状態を観察しながら経過を見ることになります。
病院へは、大きめのナプキンをあて、バスタオルを腰に巻いたり、ナプキンで足りなそうであれば赤ちゃん用のオムツをあてて向かいましょう。破水は救急車を呼ぶ適応ではないので、病院からの指示がない限り救急車は呼ばないでください。タクシーや自家用車で病院へ向かいましょう。
破水後1〜2日の間に自然に陣痛が来ることが多いのですが、陣痛がなかなか来ないこともあります。そのような場合は、病院によってタイミングはそれぞれですが、感染徴候や赤ちゃんの状態を見ながら陣痛促進剤を使用しお産を進めることになります。
お産の流れや呼吸法を練習していても、「いざお産が始まると覚えていたことも忘れてパニックになってしまいそう!!」と不安に思うかもしれません。しかし、パニックにならないようにするために必要なのが呼吸法なのです。今、どういう状況にあるのか、お産の進み具合を知り、その時々に適した乗り切り方をすることが大切です。
「すべて自分一人で乗り切らなきゃ!」とは思わないでください。助産師が寄り添って進行状況をお伝えしたり、進行に合わせた呼吸法をリードしてくれます。ご家族も一緒になって不安になったり焦ったりしてしまうと、妊婦さんご自身の不安がさらに大きくなってしまいます。
ご家族皆さんでお産の流れを復習したり、呼吸法の練習をしたり「お産が始まったら…」と具体的なシミュレーションをしておくことが、いざという時の気持ちの余裕にもつながることでしょう。
回答いただいた助産師さん
大谷紗弥子さん
聖母病院(東京都新宿区)勤務。
妊産婦さんやそのご家族が安心して新たな家族を迎えられるようにサポートをするかたわら、妊娠前の女性や妊婦さんへの食育やマタニティヨガを通して、女性のからだづくりにも携わっている。