助産師に聞く 妊娠後期のQ&A
妊娠後期の悩み・不安
出産を間近に控えた妊娠後期は、からだだけでなく、心も不安定になりがちです。
ひとりで抱え込まずに、助産師さんに相談をして残り少ない貴重な妊娠期間を存分に楽しみましょう。
おなかの張りが続くとき、病院を受診する目安は?
最近、おなかが張りやすいのですが、どのようなタイミングで受診したら良いのかわかりません。ほうっておくと危険なおなかの張りとはどういう状態なのでしょうか。
また、妊娠後期になったらしておくべき最低限の準備やいざというときの対処方法を教えてください
妊娠中、ほとんどの妊婦さんが経験するおなかの張り。「おなかが張る」とは、本来、柔らかい子宮が収縮して硬い状態になることをいいます。
妊娠後期になると、子宮が大きくなり子宮の筋肉が張りやすくなるため、おなかの張りを訴える妊婦さんが増えてきます。生理的で心配のないものも多いのですが、病気やトラブルのサインなこともあり、簡単に「心配か・心配ないか」の区別ができないのが妊娠中の張りです。
張りや痛みの感じ方は人それぞれ。張りの感じ方と実際の子宮口の状態は違うこともあります。おなかの張りがどんな感じかよく分からず、自覚症状がなくても実際には張っていることもあります。
張っていない時のおなかの状態を知って、「いつもと違う」という感覚に気が付けるように、自分のおなかの状態と向き合う時間を作りましょう。
おなかが張っている場合、まずは、安静にすることが第一です。
そして、生活の中でおなかの張りの原因になっていることはないか注意し、改善してみましょう。
安静にして30分程度で張りが治まる時は様子をみていいでしょう。次回の妊婦健診時に、おなかの張りを感じたことを医師に伝えましょう。その際、どのあたりがどのような感じで張ったのか、どう対処したのかを詳しく伝えてください。
以下のような時は、かかりつけの産婦人科に相談をしましょう。
○30分以上安静にしているのに、張りが治まらない。張りや痛みが強くなる。
○絶え間なくずっとおなかが板のように硬いままで、出血を伴う。
○出血やおりものに出血が混じる。
○張りとともに息苦しさを感じる
○動けないほど痛い。
○下着が濡れたり何となく流れるような感覚がある。
このような症状がある場合、妊娠37週未満でもお産が進行してしまう危険がある「切迫早産」や、分娩前におなかの中で胎盤がはがれてしまい、赤ちゃんもお母さんも危険な状態になる「常位胎盤早期剥離」という病気の可能性があります。
切迫早産の場合は、それ以上おなかの張りを強くしないために張り止めの飲み薬を処方されるかもしれません。また、程度によっては入院して点滴で、張りを抑える治療が必要になる場合もあります。
常位胎盤早期剥離の場合は即入院をし、緊急帝王切開が必要になります。
このように、救急の受診や妊婦健診に来てそのまま入院をしなければいけないということがあります。お仕事をされている妊婦さんや上のお子さんのお世話をしている妊婦さんは、「まさかこのタイミングで…」と混乱してしまうかもしれません。
そのような急な入院に備え、最低限必要だと思うもの(パジャマ、下着、スリッパ、洗面用具など)は事前に緊急用の荷物として準備し、ご家族もわかるようにしておくとよいでしょう。また、上の子のお世話に関することも、早めにご家族で話し合って決めておきましょう。
「我慢できたから…」「仕事があって…」「上の子をみてくれる人がいなくて…」などといった理由で受診が遅れ、思った以上に深刻な事態になってしまうこともあります。適切な処置を受けることで、トラブルは最小限にくい止めることができますので、心配な時や判断に迷う時は、自己判断や我慢はせず、早めにかかりつけの産婦人科に相談をしましょう。
妊娠は病気ではありませんが、正常に経過するのが当たり前ということはありません。妊娠はいつ何が起こるかわからないということを妊婦さんだけではなく、周りのご家族も心構えをしておきましょう。
回答いただいた助産師さん
大谷紗弥子さん
聖母病院(東京都新宿区)勤務。
妊産婦さんやそのご家族が安心して新たな家族を迎えられるようにサポートをするかたわら、妊娠前の女性や妊婦さんへの食育やマタニティヨガを通して、女性のからだづくりにも携わっている。