笑顔に愛を|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第9回】~ 赤ちゃんと笑顔 ~

入選

・笑顔に愛を

長野県  主婦  27歳

今年の初春、待望の長男が産まれた。両家の兄弟姉妹の中で初出産だったこともあり、家族や親族は大喜びだった。明るい子になってほしいと願いを込めて、あきひろという名前をつけた。田舎に嫁いだこともあり、男児を無事に産んだことを、少なからず誇りに思い、頑張って子育てしようと思っていた。
しかし、現実は甘くなかった。夫の実家には入らず、中古の家を買ったので、まずお金がない。また、夫の休みが少なく、昼間はほとんど家にいて、家事をこなさなければならない。慣れない子育てに家事、さらに帝王切開での出産だったため、赤ちゃんを抱き上げると傷口が痛むほどだった。ストレスで母乳の出も悪く、早々とミルクに切り替えた。
もちろん同じような、もしかしたらもっと大変な環境でも、頑張って子育てをしていらっしゃる方はたくさんいるだろう。そう思うと、余計に悔しく、また情けなくなった。今思えば、いわゆるマタニティブルーだったのだろう。母親失格だと何度も自分を責め、毎日泣いた。遠方のため、家族もあまり来られず、友達とも遠く離れたことが悲しかった。
夫は子育てに協力的だったが、それでもちょっとしたことが不満で、毎日やつあたりした。しかし、働いて帰って来た夫に、ひどいことを言ってしまう自分が、また嫌になった。
そんな悪循環の中、当然赤ちゃんにも優しくできなかった。特に、泣いている理由がわからない時は、一緒になって泣くこともしばしばあった。
二ヶ月を過ぎたある日、少し不思議なことがあった。いつものようにイライラしながら夫を送り出し、少しでも寝ようと横になると、赤ちゃんが泣き出した。ミルクはあげた、オムツも替えた、室温も適度。しかし、抱き上げてあやしても、全く泣き止まなかった。睡眠不足もあり、だんだんと疲れが増してきて、ついに一緒になって泣き出した。すると突然、さっきまで泣いていた赤ちゃんが、ぴたっと泣き止んだ。そして、涙が残ったままの笑顔で「あーくー」と声を出した。声を出したのは初めてではなかったが、泣きながら笑うのは見たことがなかったので、少し驚いた。赤ちゃんは「あー」「あっく」と声を出し続けていた。
その途端、思い出した。子育ては嫌なことばかりではなかった。産まれたばかりの赤ちゃんを抱き上げた時、指を差し出したら小さな手で握り返してきた時、義父母とお宮参りに行った時・・・。挙げればきりがないくらい、嬉しいことも楽しいこともたくさんあったのだ。どうして忘れていたのだろうか。
あきひろという名前なので、あやす時はいつも「あっくん」と呼んでいた。そのせいか、偶然かはわからないが、赤ちゃんは声を出す時、よく音を真似て「あーくー」と言った。自分の名前を呼んでいるみたいだと、家族で話していたこともある。
泣きながら笑った時、赤ちゃんはいつものように声を出した。特に意味はなかったのかもしれないが、まるで親が泣いている子をあやす時のようだった。
赤ちゃんの思いがけない愛にふれ、笑顔に救われた。子育ての楽しさを思い出すことができた。それ以来、少しずつではあるが、周りの協力もあり、徐々に落ち着いて子育てできるようになってきた。赤ちゃんのおかげで、愛する大切さを改めて思い知らされた。子育ては学びであると恩師が仰っていたが、自分を成長させる良い機会であると実感した。
今後も、きっと色々あるだろうが、赤ちゃんと共に成長し、乗り越えていこうと思う。赤ちゃんの笑顔が、大切なことを思い出させてくれる。それが一番幸せなのだ。

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