【第5回】~ 赤ちゃんと笑顔 ~
入選
・双子の赤ちゃんと笑顔
【一般部門】
大阪府 主婦 38歳
今年二月に男の子と女の子の双子を出産しました。上には三歳の女の子が一人、そう私は三児の母なのです。双子を出産してから今まで何気なく使っていた言葉がすごく気になりだしました。双子をベビーカーに乗せて連れているとどうしても目立ち、通りすがりの人が『まぁーかわいい』と同時に『まぁ~双子! 大変やねぇ~』と声をかけていくのです。人って勝手なもので、多分自分が反対の立場なら私も『大変ですね』と言ってたかもしれません。みんなはねぎらいの言葉として掛けてくれるのは重々わかっているのですが、大変だ~と思ったら余計に『大変、大変』と思ってしますネガティブな性格の私、ですから『はい、大変です』と素直に言えずつい『はぁ~』と言葉を濁してしまうのです。
ある日の夕食後、二人の赤ちゃんをあやしながら主人が『双子って世話は二倍かかるし大変な事もあるけど、二倍お得やねぇ~』と笑って言ったのです。私はその『二倍お得やねぇ~』という言葉に、よどんでいた胸の中にすぅーっと風が通り抜けていく感じがしました。大阪で生まれ育った私は『お得』という言葉に弱いのはわかっていましたが… 二倍お得かぁ~、同時に二人の成長がみれる、二人の笑顔も、楽しいさも二倍っていうことを毎日の育児に追われすっかり忘れていたのです。二人の世話に時間がかかって長女にかまってあげる時間が少なくなったり、また双子を連れての外出もそう簡単にはいかないので外に連れていってあげれないなどマイナスな事ばかり考えていたのでした。また二人が同時に泣けば一人しか抱いてあやすことができずもう一人はそのまま泣かせておかなければならない罪悪感も感じていました。このことは市の保健婦さんに話したら、双子は双子で常に横に誰かがいてるという安心感があるのよと言われ気持ちが楽になったものでした。『じゃーこれから大変やねぇーと言われたら、二倍お得ですよと言ったらいいよね』と私は返答しました。『そうやん、そう言ったらいいねん』と主人。今まで外に二人を連れて行くとまた出会う人に同じ事を言われると少し億劫に思っていた私は、それ以来気が楽になったのでした。それを気づかせてくれた主人に感謝です。
以前ある子育ての講演を聴きに行った時に『子供は子供同士で育つ』とある方がおっしゃっていました。長女には二人の赤ちゃんが大きくなって一緒に遊べるようになったら、またみんなでお弁当を持ってピクニックとか行ったら楽しいねと話しています。喧嘩したり色々なことを学んで三人大きくなるのでしょうね。三人の成長が楽しみです。
今私のすぐ横に目をやると、無邪気に微笑む赤ちゃんがいます。只今五ヶ月、あやすとだいぶ声を上げて笑うようになりました。産まれて数ヶ月の赤ちゃんは、笑っているようにみせかけて周りの人の微笑みをさそうそうです。赤ちゃんの笑い顔を見るとこちらもつい『ニコッ!!』としてしまいますよね。産まれてから泣いて寝てお乳を飲んでの繰り返しから、だんだんと表情が出てきて初めて笑ってくれた時の感動は今でもはっきり覚えています。2・3時間おきの授乳には母親は睡眠不足になってしんどいと思うこともありますが、この笑顔には何事も吹き飛ばしてしまうくらい不思議な力がそなわっています。
一人の女性が子供を産む人数1.29といわれる少子化の時代、子供を育てるには大変なことも沢山あると思いますが、なにものにもかえがたいこの『赤ちゃんの笑顔』を見れることの幸せをかみしめ、これからも自分なりに精一杯頑張っていきたいと思っています。そしてこの笑顔が沢山見れますように、欲張りかもしれませんが寝ながらでも笑っていられます様に、子供たちに今日もおやすみ前の絵本を読み聞かせ楽しいことを考えながらいい夢を見て笑ってほしいと願うのです。