【第4回】~ はじめての沐浴 ~
特別賞
・神様からのプレゼント
【一般部門】
谷口 真帆
兵庫県 主婦 29歳
入院生活5日目。とうとう沐浴実習の日がやってきた。初めての赤ちゃん。この頃パパの帰りは深夜、休みもほとんどないような状態だったので、赤ちゃんのお世話は私がしなくちゃ!と出産前から気合が入っていた。特に沐浴は、1人で出来るかどうか1番心配していた事だった。
時間になり、暖かいお部屋で彼女を裸んぼにして驚いた。なんてやせっぽっち!裸んぼの姿を見るのは彼女が産まれた時以来。でもその時は嬉しさと疲労感といろんな気持ちでいっぱいで、産まれたばかりでまだ胎脂のついたままの彼女を胸の上に乗せてもらった時、おそるおそる指や顔に触れてみるのが精一杯だった。
とてもちっちゃいんだなぁと思いながら体重を量り、お湯の中へ。幸い彼女はお風呂好きだったようで、泣いたり暴れたりする事もなく、初めての私はとても助かった。とても気持ち良さそうにされるがままになってぷかぷか浮いているのがなんだかとても愛らしくて、退院後の2人だけの沐浴時間を今から楽しみにしてしまうほどだった。
背中を洗うために彼女をうつ伏せにして私は目を疑った。彼女の背中の真ん中に直径1.5cmくらいの黒いアザがあったからだ。指導の看護師さんは「あら~ビキニが着れないわね~」なんてニコニコしていたけれど、私は笑えなかった。親はアザがあろうが無かろうがこの子が可愛い。でも彼女はどうだろうか。このアザが彼女を後ろ向きにする事だって無きにしも非ずじゃないだろうか。私は一瞬の間に色んなことを考えていた。
私がそんな事を考えている間、やっぱり彼女は気持ち良さそうにプカプカしていた。その時彼女の背中を見ていてハッとした。アザの中にもう少し色の濃い小さなホクロがある。2つ、3つ。よく見るとそれは顔のようで、スマイルマークそっくりだったのだ。それをみて曇っていた私の心はパッと晴れた。後ろ向きに考えていたのは私のほうだ。こんなにハッピーなマークが背中についているこの子は、なんてラッキーなんだろう。神様からプレゼントもらっちゃったな、って嬉しくなった。
彼女はもうすぐ5歳になる。今も一緒にお風呂に入る。スマイルマークは健在で、彼女のお気に入りでもある。
この先、それが彼女を悩ませる事もあるかもしれない。その時はそのマークをどうするか、彼女の意志に任せよう。でも私は彼女を初めて沐浴させた時に見つけて幸せな気持ちになったスマイルマークと、彼女が気持ち良さそうにプカプカしていた姿をセットにして宝物にしておこうと思っている。