赤ちゃんに励まされて|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第14回】~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

・赤ちゃんに励まされて

石川県  ボランティア  男性  66歳

激しい交通事故の後遺症で長期療養生活を過ごしていた総合病院には、小児科の専門病棟が併設されていました。
そこには、重い病気を背負って生まれてきた赤ちゃんが、治療を受けながら、お母さんとともに入院生活を送っていました。
一般病棟とは中庭を隔てて建っていましたが、赤ちゃんが泣く声が時折聞こえてきて、大人の患者さんの心を和ませたり、心配させたりしていました。
そんな赤ちゃんと私の関わりは、実に衝撃的なものでした。
回復の見込みがないことや孤独感から自暴自棄に陥った私は、精神的にも錯乱状態の毎日でした。
今になって思えば本当に恥ずかしいことですが、小児病棟にまで響きわたるような大声で日々泣き叫んでいました。
そんなある日のこと、小児病棟から寄せ書きの色紙と写真が届けられたのです。
ダウン症候群やムコ多糖症や軟骨形成不全症などの先天性疾病で、療養中の赤ちゃんを介護するお母さんたちが、泣き叫ぶ私を励まし、慰めてくれるために、応援のメッセージや絵を描いてくれたのでした。
半狂乱となり、拘束されたベッドの上で色紙を手渡された私は、一瞬にして血の気が引いてゆくのを感じました。
お母さんに抱かれた一人ひとりの赤ちゃんの写真を見て、「なんという愚かな行為をしているのだろうか」と感じた瞬間、熱い血潮が全身に蘇ってきたことを、はっきり覚えています。
そのお母さんたちだけでなく、医師や看護師さん、ヘルパーさんや他の患者さんからも温かい応援をいただき、蒼ざめていた顔に熱気がみなぎり、再起への努力を始めることができました。
それからも検査や手術が続きましたが、心の中には木漏れ日が差し込んでいました。
寝たきりから車いすへと治療が進むころからは、小児病棟の赤ちゃんや頑張っているお母さんたちを訪問するようになりました。
はじめは、励ましのメッセージを届けてくれた感謝の気持ちからでしたが、少しでも手助けができたら…と真剣に考えるようになりました。
医師から、新生児の2パーセントから5パーセントが、出生時、或いは出産前の段階で疾病にかかっているという現状を教えられましたが、「必ず治る!」と信じて辛く苦しい検査や投薬に耐えていたお母さんが、私に心の叫びを訴えてくるようになりました。
退院を予定して赤丸を付けたカレンダーの日付が、大きなバツ印で延期されたりすると、涙ながらにカレンダーを裏返します。
そんな姿を見せられると、こちらの胸がより痛んできます。明日にも危うい小さな命を思うと、涙がこぼれそうになりました。
元気を回復して退院していく赤ちゃんを見ると、つい嬉しくなって拍手をしたくなりますが、それを見送る他のお母さんの気持ちを思うと急に切なくなり、自分の病室に戻って深いためいきをつくことになります。
リハビリセンターへの転院で、赤ちゃんやお母さんたちとは半年ほどの付き合いで別れの時を迎えることになりましたが、感謝の気持ちが途切れることはありませんでした。
一人ひとりの赤ちゃんの笑顔が、リハビリの苦しさを紛らわせてくれました。
多くの赤ちゃんが、できるだけ早期に診断され、正しい療育が開始されることを願いながら、先天性疾患の予防や治療にも高レベルの医学力を発揮してほしいと心から祈らずにはおれません。
六年余の療養生活を経て社会復帰できたのは、赤ちゃんとお母さんたちの存在があったからだと、深く感謝しています。

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