思いがけない一日体験|赤ちゃんの沐浴はスキナベーブ

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持田ヘルスケア株式会社

エッセイコンテスト

スキナベーブ 赤ちゃんエッセイコンテスト

【第14回】~ 赤ちゃんとの出会い ~

入選

・思いがけない一日体験

神奈川県  専門職  女性  41歳

妹が二人目の子を出産することになり、入院中の一日だけ一歳三ヶ月の上の甥っ子を預かることになった。帝王切開での出産のため前々から日程は決まっていて、都合良く私の仕事の休みも取れた。暑い夏の日だった。
にも関わらず、独身で一人暮らしの私は前の晩に友人としこたま酒を飲んでしまい、二日酔いで甥っ子を迎えに行くという失態を犯してしまった。
頻繁に妹の家に遊びに行っていたからか、甥っ子は私を慕ってくれていて、母親と離れることで泣きわめくこともなくすんなりと私の家にやってきた。
さて連れてきたはいいものの、私にとって一歳三ヶ月の人間と丸一日二人きりなどという事態は初めて。おまけに二日酔い。本来ならダラダラと寝て過ごしたいところだがそうもいかない。頭痛までしてくる始末。甥っ子はまだ言葉を喋るわけでもなく「うー」とか「あー」とかを発する程度で何がしたいのかも良く分からない。とりあえず、借りてきた愛用の子供椅子に座らせてテレビを見させていた。幼児向けの教育番組を見て、座ったまま手足を動かしリズムを取っている。そんな姿は本当に可愛らしい。
しかし、私自身がどうしたものかと悩んでしまった。エアコンのない我が家は暑いし、二日酔いもなかなか抜けない。寝たいがこの小さな人間を放置して寝ることなどできず、預かったことをほんの少し後悔した。もちろん前日に飲み過ぎた自分への後悔のほうがはるかに大きかったが。
「ごめんねぇ。ちょっと頭が痛くてさぁ。」
分かるはずもないと思いつつ、額を軽く揉みながら言ってみた。甥っ子はポカンと私を見ている。
すると突然、椅子から立ち上がりよたよたと歩き出した。どこへ行くのかと見ているとテーブルの上にあった小さな箱をつかんで戻ってきた。箱を見るとそれは、子供用の虫刺されパッチ。蚊に刺されたときに掻いてしまわないよう患部に貼るシールのようなものだ。甥っ子が来るにあたって妹を真似て買っておいたものだった。すると小さな手で不器用に箱を開け、中身を取り出し、フィルムははがさずそのまま私の額に貼ろうとした。
私は心底、驚いた。まだ言葉なんか分からないと思っていた一歳三ヶ月の彼が、私の仕草や表情で私の苦痛を察知したのだ。多分、自分が虫に刺されて苦痛なときに妹にそれを貼ってもらっていたのだろう。だから私にもそれを貼れば、良くなると考えたに違いない。言い表せないほどに感動し、涙が出そうになった。
「ありがとう。大丈夫だよ、もう治った。」
私が笑顔でVサインをすると、甥っ子は「そう?」と言うような表情でパッチを床に放り投げ、椅子に座ってテレビをみていた。
なんて情けないんだろう、私は。こんなに小さくて「うー」とか「あー」しか言えないのに、ちゃんと分かってるんだ。しゃんとしなきゃ。自分の不甲斐無さを痛感し、甥っ子としっかり向き合おうと気を引き締めた。そのあと、甥っ子の好きそうな場所へ行って思う存分遊び、二人でご飯を食べて一緒に眠った。その日、甥っ子は一度も泣かなかった。もしかすると自分の置かれた状況が分かっていて、頑張っていたのかもしれない。
妹が無事に出産を終え、甥っ子を連れて病院へ向かった。妹は数日ぶりの長男との再会で感極まったのか、ポロポロと泣いた。私にとってはたった一日の中で得た感動や驚きだったが、日々一緒にいればたくさんたくさんある出来事なのだろう。我が子愛しさに涙がこぼれた妹の気持ちは深く理解できた。
弟が増え忙しくもなるが、この先更なる感動や驚きがあるに違いない。私は心動かされたこの一日を大切に胸に刻み、彼らの成長を見守りながら、いつでも手助けをしていきたい。

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