【第12回】~ 赤ちゃんへの手紙 ~
入選
・奇跡の子-臍帯脱出-
埼玉県 主婦 女性 28歳
あなたが産まれてきてくれた日は、ちょうどお父さんが1ヶ月間の出張からたまたま帰ってきた日でした。
お父さんが家の鍵を忘れて出張に行ったため、里帰り先の茨城から東京に戻ってきた日の朝方に破水しました。
もちろん産む予定の病院は茨城。
でも、東京から茨城に帰るのは危険と言われ、近くの病院に運ばれました。
もともと切迫早産ぎみで、この日も予定より3週間も早かったのです。
予定外のことに少し焦りもありましたが、内心は「もうすぐ逢えるんだ。」とお腹にいるあなたがとてもいとおしくて仕方ありませんでした。
しかし病院に運ばれたあと、先生から出てきたのは「赤ちゃんはダメかもしれない」という言葉でした。
既に、へその緒が子宮口から出てしまっていたのです。
布団に入るまで、とっても元気にお腹を蹴っていたあなたに、私たちは生きては逢えないんだと涙が止まりませんでした。
お父さんも看護師さんも最後まで勇気をくれていました。
「大丈夫だから!泣いていたら赤ちゃんに伝わっちゃうよ!」って。
6時前に入った手術室。
6時4分に出てきたあなたは、とても元気だったそうです。
酸素が届かなくて苦しかったはずなのに、とても元気に私たちに逢いに来てくれたのです。
初めて抱いたあなたはとても小さくて、ただただ生きていてくれたことに涙が止まりませんでした。
あなたに触れていないだけで本当は生きていないんじゃないかと不安で不安で、ずっと触れていたくて仕方ありませんでした。
こんなに小さい体で、苦しくても頑張って生まれてきてくれてたこと、言葉に出来ないくらい感謝してます。
今ではその出産が嘘だったかのように笑ったり泣いたり、毎日違う顔を見せてくれて、本当に本当に幸せです。
あの時の助産師さんの言葉、麻酔で記憶も定かではないなか覚えてることがあります。
「奇跡の子。十何年助産師やって来たけど、初めて」
命が誕生することは、本当に奇跡に近いことなんだと実感した言葉でした。
その奇跡の中、あなたに出逢えたこと本当に幸せです。
ありがとう。