【第12回】~ 赤ちゃんへの手紙 ~
入選
・親子3人のリラックスタイム
神奈川県 主婦 女性 29歳
初めての共同育児だと思った。
おっぱいは母親しかあげられない。おむつ替えも初めてとはいえ一人でできた。でも沐浴は二人で入れた。私が息子の身体を支えて、夫が洗った。
初めての沐浴は、退院してきた日。
息子は生まれた翌日から退院日まで保育器に入っていたので沐浴していなかった。
沐浴は父親の役目、と妊娠中から約束していた。夫も両親学級では張り切って練習していた。でも、練習の時はおとなしい人形だ。少しくらい不器用でもうまくいく。いざ息子を目の前にすると体の小ささとぐにゃぐにゃに怖気づいてしまったようだ。もちろん私も一人で入れられない、と弱気だった。だから二人で入れることになった。
息子は特によく泣く赤ちゃんだった。助産師さんにも
「よく泣いて元気ですね」
と笑われてしまうほど力強く泣いた。初めの1か月はおっぱいもうまく飲めていなかったので、それは激しく泣いた。抱いているか、授乳していないと機嫌が悪かった。
だから私たちは沐浴の時こそ大泣きされると思った。服を脱がしている間は、やっぱり泣いた。
泣いて、手足をめちゃくちゃに動かして暴れる息子を落とさないように抱っこした。おそるおそるおしりからベビーバスに浸ける。
お湯に入った瞬間は、体がピンっと固くなった。目がまあるくなった。ただでさえ目が大きいのに、限界まで広げているのではないかと思うほどだ。それから
「ほぅ…」
と息をはいて、体から力が抜けていった。もう泣いていない。しっかり体を支えていないとおしりと足がぷかぷか浮いてしまいそうだった。体を私の手に預けてリラックスしているようだった。なんだか温泉に浸かってため息をついているオジサンに見えた。
それから、沐浴をするときはいつもこの表情になった。ため息もちゃんと毎回するから面白い。シャワーだとこうはいかない。1か月検診後にベビーバスをやめようかと思い、シャワーにした。でも何度やっても泣く。
もうすぐ3か月になろうとしているが、まだベビーバスを愛用している。おっぱいも上手に飲めるようになって、体重が増え、身長も伸びた。ベビーバスが小さく感じる。でも浸かったときの表情を、ため息付きのその気持ちよさそうな表情を見たくてまだ使い続けてしまう。
あとどのくらい使えるかな。親子3人のリラックスタイム。大きく成長してくれてうれしいけど、ベビーバスが使えなくなる日を考えるとちょっとさみしい。