【第12回】~ 赤ちゃんへの手紙 ~
入選
・成長した『おじいちゃん』
広島県 会社員 女性 31歳
これから生まれてくる赤ちゃんへ。
お兄ちゃんが生まれてから成長した、おじいちゃんのお話をしてあげますね。
男の子を初めて出産した3年前こと。初めて母となった私ですが、私の父も初めての『おじいちゃん』となりました。
私の父はいわゆる団塊の世代。朝早くから夜遅くまで仕事、休日は接待や自分の趣味に時間を費やす日々。子育てはもちろん家事も一切しない。三人兄弟の私たちは母子家庭のような環境で育ちました。それでも何とか家族円満に過ごせたのは、父の悪口など一切言わず懸命に子育てしてきた母が忍耐強かったのだろうと思います。そんな家庭に育った私には、父が孫を可愛がる様子が想像もできず、産後に里帰りすることが少し不安でした。
そして、不安は的中することとなったのです…。
出産後、退院したその日に夫の親戚や実家へあいさつ回りを行い、2時間車に揺られながら実家に帰った頃には疲れてグッタリ。息子も環境の変化からか、実家に帰ってすぐにひたすら大泣き。まだ母親になって一週間、何を欲しているのか分からないので、オムツを確認したり慣れない手つきでミルクを作り始めたりとオロオロしていました。そんな時、すでにホロ酔いの父が一言。
「おい抱っこくらいせんかい!泣いとるだろーが!!」と、私に一喝したのです。
産後のマタニティーブルーも重なり疲れていた私は、息子を抱きながら部屋の隅っこで泣いていました。
そんなに言わなくてもいいのに、初孫なのに…。
自分が抱っこしてくれればいいのに…やっぱり子ども、嫌いなのかな。
義理のお父さんはあんなに喜んで抱いてくれたのに…。
実家に帰ったことを早速後悔していました。夫の父親が子煩悩である為、余計そのギャップを感じてしまい悲しくなっていたのです。
けれどもそんな中。ヘビースモーカーの父が、リビングではなくちゃんと換気扇の下へ移動してタバコを吸っている姿に気付いたのは帰省から数日後のことでした。
息子をまったく抱かなかった父ですが、帰省から1週間、2週間経つ頃には、私や母が見ていない所で、おくるみに包んでおそるおそる抱いている様子を目撃しました。
帰省から3週間、そろそろ散歩したかった私に「少しなら見ておけるから大丈夫、行ってくれば」とそっけなくでも言ってくれたのです。
少しずつ、『孫』との距離を縮めている様子が見て取れるようになりました。
その後、帰省するたびに出来る事が増えて成長していく息子に対し、接する態度が少しずつ『おじいちゃん』らしくなりました。伝い歩きができるようになると自分の足に掴まらせて遊んでみたり、歩けるようになると手をつないで散歩したり、時には抱っこしたり肩車をしたり。私が子どもの頃にしてもらえなかった事を取り戻すかのように接している姿には、私以上に母が一番驚いたと思います。
息子の成長とともに、『おじいちゃん』としての父の成長がよく見られるようになりました。
2年前に兄の所にも二人目の『孫』が生まれ、現在私のお腹にも3人目の『孫』が宿っています。先日帰省した時には私の大きなお腹を見るなり「おお、だいぶ大きくなっとるの~」と、嬉しそうにさすりました!上の子の妊娠の時には考えられなかった光景です!!
子どもにとって、おじいちゃんおばあちゃんは特別な存在であり、できればいつも笑顔で「よく来たね」と可愛がってもらいたいもの。人並みのおじいちゃんとして成長した父に、今度の里帰りは大きな期待をしています。
良かったね、これから生まれてきたら、おじいちゃんがい~っぱい抱っこして遊んでくれるよ。今度はオムツ換えにもチャレンジしてもらおうかな?