【第10回】~ 赤ちゃんとの記念日 ~
入選
・なかなおりしお
大分県 主婦 35歳
長女は5歳、今まで一人っ子生活を満喫してきたけど、周りに兄弟がいることも羨ましくて仕方ない様子。
「ママ、ジュースいっぱい飲んで」
「なんで?」
「ジュース飲んだらお腹が膨らむでしょ?そしたら赤ちゃんできるんでしょ?」
ジュースの飲みすぎを怒られるのに、太ってお腹が出てくるよ!と言われ続けたから、彼女なりの赤ちゃんの作り方だと思っているらしい。
あんまりの懸命さにかわいくて抱きしめた。
「ママ頑張ってジュース飲むよ(笑)」
ここから赤ちゃん返りの日々が始まった。
妊娠がわかって、お腹が出てきたら「赤ぴん」と名づけて呼び始めた。なんだかいい調子!優しいお姉ちゃんになるなぁって思ってたら・・・
お腹が大きくなって抱っこが出来なくなる反動で、夜は添い寝で離れない。出産の時に入院するために離れるのを想像しただけで泣き出す始末。
さみしいって言えずに、全身で寂しさを表現するようで見ていて可哀想だったけど、私は8ヶ月まで社員として働いていたので、家事と仕事と長女のお世話全般で余裕がない。もっと抱きしめてあげたいけど、旦那は釣り三昧で家にいないし、手伝ってくれる人もいない。
泣きたい気持ちのまま、やっと仕事を退職し長女との時間を持てた。我慢させた分いっぱい甘えさせてあげたくて、ベッタリ過ごした。
そして出産のために里帰りをする時期に。実家はここから1時間半。
「みくは行かないよ。幼稚園お休みしたくないから、パパとここで寝る」
意外な一言。ママなしで寝れるの?一度も離れたことないのに?。
「でも、早く産んですぐに帰ってきて」って。
予定日の20日前に心配しつつも、一人で里帰りした。
最初の夜、電話したら「大丈夫」と寂しげな声。「パパにギューしてもらって寝たらいいよ」と言ったけど、実際はパパの手を振り払ってぬいぐるみを抱いて、泣きながら寝てたみたい。
二日目の夜、電話に出てくれない。「ママの声を聞くとさみしくなるから」って。いじらしいけど、私のほうが涙が止まらない。
早く産んで、長女のところに帰りたい一心で歩いてみたりしつつ、三日目メールを書いてみた。
「ようちえん いってらっしゃい」一言だけのメール。
泣きながら読んでご飯が食べれなくなっちゃったって。
もう、ママのほうが無理!!帰っちゃおうかなって思った夜、破水!来た!!ママ頑張ってくるね!って心で叫びつつ病院へ。
美空も頑張ってるし、パパ明日も仕事だし、夜中にみんなに迷惑かけたくなくて、陣痛も進まないから一人で入院して、翌日昼に一人で出産。
頑張ってるお姉ちゃんを応援したくて、赤ピンは頑張って早く出てきてくれた。
夕方パパと初めて赤ちゃんを見たみくは、恥ずかしそうに赤ちゃんに触ることもなく、私にも近づかない。
我慢するクセがついてしまったのを、おいでって抱きしめてあげたら「もうだっこできる?」って聞いてきて、いつもの甘えん坊に戻せた。もうお嫁に行くまで離れなくていいからね。
実家に帰らず、自分たちの家での子育て開始から2ヶ月。
夏休みが始まって、親子げんかも毎日、姉妹げんかも毎日。
ケンカすると届く「なかなおりしお★」のみくからの手紙が増えながら、次女も書くようになるのかな?と想像しつつ、私はこの宝物を大事に育てて、今日もけんかしていこう。